現在リリカルなのはの二次創作と日記を掲載。そのうちオリジナルの恋愛物も書くかも……
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空の少年14~機械の心、ヒトのココロ~
ふと感じた気配に、彼の意識は夜の海から浮上を始めた。

それでも瞬時に覚醒することはなく、まどろみの中をゆらゆらと漂うばかりだった。

しかしそれも、身に危険が迫っているわけではないと分かっていたから。

自らの寝返りが産み出す衣擦れの音に混じって鼓膜に届く、常人には聞き取ることが出来ない微かなギアの軋み。

この数週間で聞き慣れてきた、彼の新しい家族の奏でる音色だった。

ようやく重たい目蓋を持ち上げ、網膜に光を注ぎ込む。

一番最初に視神経を通して脳が認識した色は、心まで重たくなるような鈍色だった。

その天井を見て、今居るのが自室ではないことを認識する。

真新しいが故にスプリングの抵抗力が強く、身体を癒すには荷が重いマットレスの上で身体を起こす。

眠気を払うために頭を左右に揺ると、ベッドの下で気配が動いた。

それは前後左右の二次元的な動きを見せず、真っ直ぐと重力に逆らうように天を目指した。

そんなことをすれば、まもなく底板と熱いキスを交わすことになるはずだが、期待は外れて鈍い音が響くことはない。

代わりに現れたのは、ベッドの上に生首一つ。

視界に映るのは明るい水色の髪で覆い隠された後頭部だ。

それがゆっくりと回転を始め、180度回り終えて見えたのはあどけない笑顔。

「おっはようございまーす。愛しのセインちゃんのモーニングコールでーす」

少女の生首は楽しそうにそう語りかけてきた。

見る者にも思わず笑みを浮かべさせるような、屈託のない眩しい表情だ。

場所が場所で無ければ。

完全に意識を目覚めさせた少年は、生首に手を伸ばす。

「ちょっ、黒煉兄待って。痛っ、イッタ!? アイタタタタッ!!」

握り締めた拳で万力のように米噛を締め上げる。





「どこから顔を出してるんだお前は」





生首は少年の足の間で悲鳴を上げるのだった。















魔法少女リリカルなのは 空の少年 14

  ~機械の心、ヒトのココロ~















身支度を軽く整えて自室を出る。

朝だというのに、扉を潜り抜けても陽の光が見えることはなかった。

いや、この廊下どころかこの建物の中ならば、どこに行こうと朝日を拝むことが出来ないことなど分かりきっている。

それがここが全て地下に造られているものだということを証明していた。

だがそれも仕方のないことだ。我らの主であるドクターは、その才能ゆえに世界から疎まれる存在だ。

引く手数多の欲せられる人物であるが、それと同時に別の意味で狙われることも多い。

そのことは理解しているし、納得もしているが、時折この暗い生活に溜息をつきたくなることもある。

以前は陽を浴びたいと思うようなことなどもなかったのだが、これもあの男の教育とやらの賜物だろうか。

共有区画に足を踏み入れると同時に漂う、鼻腔をくすぐる暖かな香りに、思わず笑みが零れた。

相変わらず、良い匂いだ。今日も素敵な朝になりそうだな。

そんな予感に心を弾ませながら、最早習慣となった朝食の広がるダイニングに顔を出した。

しかし待っていたのは、素敵とは言い難い、水色の髪をした妹の正座だった。

「何をしているんだセイン」

先日買い与えられたばかりの寝巻きを着たまま、首から一枚の板を下げている。

髪の色に合わせて見繕われた青のチェックのその服は、快活な妹に良く似合っていた。

だが普段の明るさはなりを潜め、喋る気力もないのか項垂れたまま私の問いに答えようとする気配はない。

「トーレ、何か知っているか」

本人からは答えが得られそうにないため、既に食卓についている姉に同じ問いを投げかける。

紺のスラックスに、真っ白なワイシャツ。その上に身体にフィットするパンツと同色のベスト。首元には簡易タイが締められている。

こういうのを男装の麗人というのだろうか。長身でスタイルの良いトーレには、良く似合った装いだ。

その姿を見て、思わず自分の身体を見下ろしてしまう。

クロムグリーンのキュロットパンツに、勿忘草のフード付きパーカー。

動きやすく特に不満を持ったことはないが、どう考えてもトーレと比べて見劣りするのは気のせいだろうか。

いや、これは元の体のサイズが問題なのだからどうしようもないのだが、それでもどこか心にモヤモヤが残る気がする。

「知っているも何も、そこに書いてある通りだろう」

私の内心など気づかずに、トーレはその精悍な顔を歪め、僅かに不快感を含ませた視線でセインの首の板を見遣る。

それに導かれるように、先程は気にしなかったパネルに注意を向ける。

そこには一つの文。

『私は男性の股座に頭を突っ込む痴女行為をしました。

 反省しています。もうこんなことはしません。』

それを見て、私自身も眩暈がした。

「……そんなことをしたのかセイン。姉は悲しいぞ」

「全然そんな積もりなかったってば! たまたま位置的にそういう状況に見えただけだって!」

「偶然でもそうなるのに問題があるんだ。そういうことにも意識を向けなさい」

「……難しいね」

新しい声が二つ、場に紛れ込んだ。

朝食の用意をしていた二人が、出来立ての料理を持ってダイニングへと戻ってきたようだ。

最近出来たばかりの兄に、目の前に座るセインと同時期に開発された妹のディエチだ。

黒とグレーのストライプシャツにデニムジーンズと一番無難な格好をしているが、それでも落ち着いたディエチの魅力を引き出しているようにも思う。

スープで満たされた鍋を抱えてエプロンを付けていると、口では難しいと言いながらもこの妹が最も今の生活に順応できているような気がする。

「兄の言う通りだセイン。自分が客観的に見てどう映るか。そういうことも考えて行動しなければ、外での生活に不都合が出る。

 先日教わったばかりだろう?」

「無駄ですわよチンクちゃん。そのときセインちゃんはお昼寝の最中だったんですもの。覚えているはずがありませんわー」

「クア姉っ、しーっ! しーっ!」

「そんなこと最初から知ってるよ。これはそれも加味しての罰だ」

遅がけに現れたのは、姉妹の仲で最もロールアウトの近い妹のクアットロ。

バーバリーのゴアードスカートに、深緋に染められたアイビーセーター。

これだけならば普通なのだが、

「お前は何度言ってもそのコート脱ごうとしないな」

「あらー、お兄様ってば、女の子に向かって脱げなんて、ヤラシイですわー。

 それにシルバーケープは私の固有武装なんですから、常に身につけていて当然です」

兄の言う通り、少しだけ違和感の残る白衣のようなケープを羽織っている。

「まあ、別にいいさ。残るはウーノとジェイルだな」

「いえ、もう揃いました」

そう告げて最後に部屋に入ってきたのは、私たち姉妹の長女ウーノと、ナンバーズの創造主であるドクター。

ドクターの服装は以前から変わりないピアニーのスーツに白衣だが、ウーノは私達と同様に普通の服を着ている。

深紅のタートルネックに、焦香の巻きスカート。トーレとはベクトルが違うが、それでも大人の女という印象に変わりは無い。

「おはようマイブラザー!! 今日も、実に素敵な朝じゃないかっ!!」

兄が来てから、ドクターは頭がおかしくなってきた。

いや、確かに以前から常人には理解できない思考形態ではあったが、ここまでではなかったはずだ。

「大人しくしてくださいドクター」

「大人しくしろだってウーノ。それは無理な話というものだよ。

 良いかい、愛する弟が僕とその娘達のために、わざわざ早起きして朝食を作ってくれているんだ。

 君はこれを喜ばずして、何に喜べばいいって言うんだい?」

何を言っても黙ろうとしない創造主に、最近ウーノの心労が半端ではないレベルで溜まっているだろう。

それでも、皆が楽しそうにしている。

不思議なものだ。まだ出会ってから2ヶ月といったところなのにな。

私達も随分と変わったものだよ、兄よ。















 ◆◇◆◇◆◇◆















「えー、全員一度会ってるから、というより昨日ドンパチしてるから知ってると思うが、自己紹介をしておく。

 俺は名前は皇黒煉。そこのジェイルと同様、管理局で創られた人造魔導師だ。まあ、ジェイルの弟みたいなもんだな。

 そういう訳で、今日から君たちナンバーズ姉妹の兄となる。

 呼び方は、お兄ちゃんでもお兄さんでもお兄様でも兄上でも兄者でも兄君でもお兄でも、好きにするといい。

 なに、俺も最近妹が二人できたからな。もう何人できようが構わん。どんとこいだ」

「「「「「……はぁ?」」」」」

壇上で声高に叫ぶ彼の言葉に、妹達の反応は芳しくない。

私とここには居ないドゥーエを除いた、既にロールアウトしている姉妹5人。

浮かんでいる感情は、共通して皆困惑といったところか。

私だって事前に聞いていなければ、この娘たちと同じ顔をしていたことだろう。

「突然で理解が追いつかないのも仕方ない。とりあえず、俺はお前達に一般常識を教えることになった。

 何故かといえば、そこの間抜けが今まで怠っていたからだな」

「いやー、恥ずかしい話だね」

どうしてそこでドクターが照れるのでしょうか。

なぜだか嬉しそうな様子で、頭をかきながら身悶える創造主を見て、どこか気分が落ち込んでくる気がした。

「とりあえず手始めに服を調達しようか。年頃の娘が、そんな破廉恥スーツしか着るものがないのはいかにも不憫だ。

 ジェイル、ウーノを連れて行くぞ」

「ああ、行ってき給え。ウーノもよろしく頼むよ」

「はい、ドクター」

突然の人選に驚く間もなく、出かける準備を整える。

準備と言っても、対して用意するものもない。

あとでなぜ私を選んだのか聞いたら、単に外へ行っても問題ない服装が私しかいなかったかららしい。

外へと向かう道すがら、彼と話を続ける。昨日から幾度か話をする機会はあったが、こうして二人で話すのは初めてだ。

「この研究所って、どこにあるんだ。来る時は直接転移してきたから、正確な座標は知らないんだが」

「ミッドチルダ南部、アルトセイムの森林地帯です。元々ドクターが幼少の頃育った地方とのことです。

 クラナガンからはかなりの距離がありますが、こちらにも小規模ながら商業地区がありますので、物資は概ねそこで揃えています」

私の案内の元、薄暗い地下の洞窟からようやく陽の光の下へとまろび出る。

樹齢の長い広葉樹林が一面に広がり、一部開けた視界から見るに標高も高いところに位置することが窺える。

「うーん、いいね。やはり人間、太陽の下で生きていかないと」

「別に日光がなくとも生命活動に支障はありません」

隣を歩くまだ若い少年の言葉に、思わずそう反論してしまった。

「そうでもないだろう。お前達戦闘機人でも、素体の大部分は人間のままのはずだ。

 日光を浴びれば必要ビタミンも短時間で生成させることが出来るし、吸収の過程も省略できる。

 夏場なら数分、冬場でも半時間外に居ればいいんだからな。屋外で通常の活動をしているだけで十分だ。

 あえて意識的に補給するよりも効率が良い」

「それは、確かにその通りですが」

「それにだ、じめじめした閉鎖空間にいるよりも、ずっと気分が良いよ」

彼は両腕を広げ、体中で新鮮な大気を感じ取るように、雲ひとつない蒼天に輝く太陽を見上げた。

「こうやって深い木々の合間から降り注ぐ陽の光を浴びる。それだけで心の中を洗い流してくれてるみたいだよ」

「よく……分かりません」

「んー、なんて言ったらいいんだろうな」

困惑の表情を隠そうともせず、一挙手一投足を観察している私に、どう説明すればいいか考えているのだろう。

「特に難しいことは必要ない。ただ、身体で感じればいい。そうすれば、自然と心が追いついてくる。

 そうだな、深呼吸してみるといい。両手を大きく広げて、この森の澄んだ空気で肺を満たして、陽の光を体中で浴びて」

その彼の言葉に私は立ち止まり、目を閉じてゆっくりと彼の言った動作を再現し始める。

顔には戸惑いが張り付いたままだったが、それでも数を繰り返すうちに、眉間によっていた筋も薄れ始めたのが自分でも分かる。

5分ほどして、私はようやく動きを止めた。

「どうだ」

「よく……分かりません」

返す言葉は、先程と一字一句変わることは無い。

「ですが……気持ちが良いのは確かな気がします」

それでも、僅かでも心が変わっていることは、何となく分かった。

「それが分かれば十分だよ」

そう言って、彼は私に微笑んだ。

今はそれで十分。

分かりました、お兄様。















 ◆◇◆◇◆◇◆















『只今戻りました』

ウーノ姉と兄と名乗るあの人が出て行ってから、6時間ほどが経過した。

ドクターの目の前に、ウーノ姉の顔が映し出された空間ディスプレイが現れる。

「ああ、お帰りウーノ。思ったよりも早かったね」

『ほとんど迷うことなく選んできましたから』

『ちゃんと全員分の服を買ってきたから、ナンバーズを共有区画に集めておいてくれ』

「ああ、それなら問題ないよ。もう皆ここにいる」

ウーノ姉を押しのけて、横から顔を出してきた男の人。

服……か。

彼が何を買いに行ったのか思い出して、自分の姿を見下ろした。

何と言っていたっけ、破廉恥スーツ、だったかな。

破廉恥という言葉の意味は知ってる。

確か、恥を恥とも思わない、恥知らずとか、俗語で言えば性的にいやらしいといった言葉のはずだ。

ニュアンス的には後者の意味だと思うが、このスーツはいやらしいのだろうか。

よく分からないね。

「ただいま、皆ちゃんといるな。お兄ちゃんからの初プレゼントだ、すぐに着替えてきな。着替え終わったら飯にしよう」

ウーノ姉以外の姉妹に一人ひとつずつ袋が手渡される。

大きさで言えばそれなりだが、重さ自体はそうでもない。

やはりこれが服なのだろう。

姉妹4人で顔を見合わせるが、戸惑うばかりだった。

「早く着替えてきなさい」

動こうとしない私達に向かって、姉が微笑みかけた。

「大丈夫よ。私も選んだけれど、きっとみんなに似合うわ」

出て行く前と今とでは、どこか雰囲気が違う気がする。

そんな時間は経っていないはずなのに。

彼女に促されるままに着替えを終え、共有区画へと再び集まった。

見慣れない服に身を包む姉妹達を、お互いで見詰め合う。

やはり慣れない格好だから違和感は感じてしまう。

でも、個人個人にあった"色"みたいなもの。

たしかにそれぞれのらしさを考えて選ばれたものだというのが分かる。

こういうのを、似合っているというのだろうか。

「ディエチ、ちょっと手伝ってくれ」

「う、うん。わかった」

突然自分の名を呼ばれ、驚きながらも彼の後に付いて行く。

両腕で今しがた買ってきたであろう荷物を抱え、迷いなく先へ進んでいく。

「あの、運ぶの手伝うよ」

「ありがとうディエチ。じゃあこの二つ頼んだ」

危なげがないとはいえ、まだ成長期を迎えていない人間の子供が持つ量ではなかった。

それで不安になった私は、自主的に手伝いを申し出た。

半分ほどの荷物を受け取り、辿り着いた先は調理スペースだった。

このラボにもこうした設備があることは知っていたが、今まで来たことはなかった。

栄養摂取も必要成分を直接体内に流し込むだけだから、食事というものもしたことがない。

「それはいかんな。人生の9割方は損をしている。もっと食を楽しめ」

使われた形跡のない厨房に疑問を覚えた彼に、その事実を教えたところ、そんな言葉が返ってきた。

でも、食事ってただの栄養補給じゃないのかな。

最低限それを達成できれば、何の問題もないような気がする。

「とりあえず、一緒に作ってみよう。時間もそんなにないし、初めてだから簡単なやつだな。

 トーストとサラダにスープ、あとは肉を軽くソテーにして。しかしこっちの肉は、元がなんの動物か分からんから怖いな」

「私も?」

「ああ、お前も。そもそも呼んだのはそのためだ。今のところ、姉妹の中でディエチが一番できそうだったから」

何を以ってそう思ったのか分からないが、言われて悪い気はしなかった。

彼に言われるとおりに、手を動かす。

慣れない包丁を使うのは少々不安を覚えたが、どこか心が浮き立つのを感じた。

「うんうん、実に微笑ましい光景だねぇ」

ふと後ろから、ドクターの声が聞こえた。

振り返ると、ダイニングの椅子に腰掛けてこちらを見つめる姿があった。

「こうして見ていると、昔を思い出すよ」

「さも昔は料理してたみたいな言い草じゃないか」

からかうような彼の言葉にも、ドクターは楽しそうに笑っている。

「ああ、私も子供の頃に、幼馴染と一緒に料理をしたことがあってね。いつも忙しい母親を元気付けようと彼女が考えて、それに付き合わされたんだ。

 お互いそれまでほとんど料理なんてしたことなかったから出来は散々だったけど、おばさんはものすごく喜んでくれてね。

 私達はそれが嬉しくてね、二人で大はしゃぎしたものさ。今でも本当にいい思い出だよ」

ドクターが昔の話をするのも珍しいことだった。自分達から聞いたこともなかったけれど、私達はドクターの私生活というものをほとんど知らない。

頭の片隅でそんなことを考えつつ、手は彼の指示を完遂させるために動かし続ける。

一時間ほど掛けてようやく完成した料理。

手伝ったと言っても、ほとんどは彼が仕上げたものだ。

姉妹達を食卓に呼んで、初めての食事の時間。

「仕込みもしてないから大したものじゃないが、それなりの味には仕上げたつもりだよ。まあ、遠慮せず食べてくれ」

そう言われても戸惑う私達を尻目に、ドクターとウーノ姉はすぐさまナイフとフォークを手に取った。

「うんうん、流石だねぇ。私とは全然違う。大したものじゃないなんて言うけど、なかなかどうして、すごく美味しいじゃないか」

「ええ、とても美味しいです」

二人の言葉に触発されるように、皆も手を動かし始める。

「あ、ほんとだおいしー」

「ふむ、これはなかなか」

「ドゥーエ姉様はいつもこんな良い思いをしてらっしゃるのかしら」

「食事など気にしたことはなかったが、思いのほか良いものだな」

みんなの評価は概ね良いものだ。私も先程味見をさせてもらったが、確かに美味しいと思った。

「特にこの野菜スープが、良い味をしているね。得意なのかい?」

「必要に迫られて始めた料理だが、最早趣味の域だな。

 あとそのスープは俺じゃない。ディエチの作品だ」

彼の言葉に食卓から一切の動きが消えた。

あれ、何かまずいことをしただろうか。

「すごいじゃん、ディエチ」

「意外な才能だな」

「やるじゃないディエチちゃん」

途端に始まる賛美の嵐。

褒められるのなんて初めてだから、どう反応すれば良いか分からない。

「そんな、私はただ言われたとおりにやっただけだよ」

「それでも、お前が作ったことに変わりないだろう」

「そうよ、これは誇っていいことだわ」

対応に困っていると、彼の顔が目に入った。

「言っただろ、損をしてるって。料理も良いものだぞ」

みんなの笑顔を見ていると、心がポカポカしてくるのを感じた。

ちゃんと料理勉強してみようかな。

今度からお願いね、お兄ちゃん。















 ◆◇◆◇◆◇◆















「何で私がこんなことをしなくちゃいけないのよ」

汚れた食器を苛立ちと共にシンクに溜めた水の中に放り込む。

その勢いで跳ねた飛沫で髪が濡れたことで、余計腹が経ってきた。

「そりゃ飯食ったんだから、後片付けぐらいやらなきゃいかんだろ」

「私が頼んだわけじゃありません」

「クアットロだって美味いって言ってたじゃないか。俺が把握している限りでは、一番食ったのはお前だ」

それを言われると、強気に反論できなくなる。

確かに私自身でも、それなりの量を食べてしまったと分かっている。

だからといって今の状況を甘んじて受け入れるかどうかは別問題だ。

このようなところをドゥーエ姉様に見られでもしたら、その場で舌を噛んで死にますわ。

「それにだ、たまには帳尻合わせてガス抜いておかないと、その内痛い目見ることになるんじゃないかと」

意味有りげな視線と共に、意味有りげな台詞だ。

「突然何のことですの」

「別に。ただ何となくだな。そう難しく考えなくてもいいぞ」

言葉の上ではそう言っているが、態度が正反対のことを示している。

気に入りませんね。全部見透かしているかのように。

私自身口では不機嫌を表しているが、別段今の行動に対して不満は持っていなかった。

面倒であることは確かだが、これは必要な行為だと思っている。

あの料理はディエチちゃんが作ったのは間違いないことで、その対価は早々に払っておいた方が良い。

貸しを作るのは結構だが、借りを作るのは癪だ。

「疲れるもんなー、分かるよ俺も。表現の仕方は違うが、ちょっと前までずっとそんな感じだったし」

「だから、さっきからあなたは何が仰りたいんですか」

「気にするなって」

すっとぼけたような顔をして、食器を洗うのをやめない隣のガキンチョ。

そういえば、こうして善意と取れるような行為をするのは久しぶりだ。

姉妹の中での役割というものを意識したのはいつだっただろうか。

多分、ディエチちゃんとセインちゃんが稼動し始めた時だろうか。

それまでナンバーズは私を含めて5人だったが、泥をかぶるタイプはドゥーエ姉様しかいなかった。

あの人は率先して悪女となった。それこそ、まるで物語の中にいる絵に描いたような悪女だ。

それは元々の性格だったのかもしれないし、そうあるべきと自分に言い聞かせていたのかもしれない。

しかし、ドゥーエ姉様は組織というものの中で必要な役割を確かに担っていた。

潜入任務のために外に出て行かれて、ならばその代わりをするのは、直接教育を受けた私の役目だと思った。

もっとも、そんなことを考えるようになったのは、やはりあの二人が稼動してから。

心のどこかでバランスが悪いと感じたのだ。

それを自覚した瞬間、私は道化になることを決めた。

私ももう、お姉ちゃんになったのだから。

いつまでも甘えていても許される妹という立場は、もう自分のものではなくなったのだ。

ドゥーエ姉様のように上手くできている自信はないけれど、それなりに様になってはいると思った。

それでも、やはりここに立っていることに疲れることはある。

誰かに泣き言を言ったこともないし、愚痴を零すこと自体出来るわけが無い。

零した時点でこの配役は崩れてしまう。だからどんなに辛くとも、それは私の中に秘めておくしかない。

「もう十分じゃないか」

「えっ」

今この男はなんと言った。

別に内心を表に出していた覚えは無い。

先程感じたように、全て見透かされているような印象を受ける。

いや、印象ではなく、真実全てを見抜かれているのではないだろうか。

「十分って」

いや、まだ終わることなど出来ない。

ドクターがこれからもドクターであり続けるなら、今の私もまた変わることは許されない。

そう思っていたが、違うのだろうか。

こんなに肩肘張って、無理をしなくても良いのだろうか。

「だって、十分だろその皿」

「えっ、さ、さら?」

「ああ、いつまで洗い続けるんだ」

言われて自分の手元に焦点をあわせれば、確かに既に十分綺麗になった皿が一枚。

「十分ってこういう……」

自分の勘違いに気付いた瞬間、顔から火が出そうなほど真っ赤になるのがはっきりと分かった。

加えて、八つ当たりをしなければ気が済まないほどの羞恥心もだ。

「何変なこと言ってるんですかあなたは!!」

思わず濡れたままの手が飛び出した。

「ばっ、お前何やってる! 後で掃除するの大変だぞ!」

「そんなの知ったことじゃありません!」

辺りに水が飛び散るのもお構い無しだった。

ただ、今目の前にいる男を張り倒したくなった。

道化とかそんなものどうでも良い。

最優先は今のこの気持ちを落ち着かせることだ。

幸い水仕事中のこいつは大きくかわそうとしない、絶好のチャンスだ。

ひとしきり張り倒した後、残っていた洗い物を一息で片付ける。

白く輝く陶器の皿に満足し、笑みを浮かべる。

「じゃあ、後始末は頼みましたわー」

そうして、泡が散乱したキッチンを後にするのだった。

自室に戻って、気持ちが幾分軽くなっているのに気付いた。

頭が冷静になってから思い返す。

あの男は何と言っていた。

『たまには帳尻合わせてガス抜いておかないと』

……まったく、本当に全部見透かされていたんじゃない。

会って間もないというのに、どれだけ目ざとい男なんでしょう。

だがこれで、この先のことに余裕ができたことも確かだ。そう張り詰めることもなさそうです。

貴方のおかげなんでしょうが、礼なんて言いませんわ、お兄様。















 ◆◇◆◇◆◇◆















「私も外行きたい」

「はぁ?」

目の前に立つ男にそう主張してみる。

先日兄となったばかりの男だ。兄と言っても、なんか私より小さい。でも態度はでかいかな。

私の言葉に否定的ではないにしろ、怪訝そうな色は浮かべている。

「だから、私も外行ってみたい」

「それは別に止めはしないが、突然だな」

「突然じゃないよ。ずっと行きたかったんだけど、まだ稼動してからそんな経ってなくてさ。

 そりゃ訓練とかで出ることはあるけど、買い物とか行ったこと無いんだもん」

「ああ、そうなのか。お前とディエチはロールアウトしてからまだ2年だったか」

そう言うと、この人は顎に手を当てしばし考え込む仕草を見せた。

うーん、駄目かなー。別に無茶なこと言ってるつもりは無いんだけどな。

今まで物資の調達はチンク姉たちが行ってたし。

でもこの間はこの人とウーノ姉が服買ってきてたから、そう頭ごなしに却下されるとは思えない。

「よし、じゃあ行くか」

「いいのっ!? やったー!!」

「何処に行くかは街に出るまでに決めるとして、とりあえず準備してきな。服を着替えるだけでいいから」

「わかった、すぐ戻る!」

いやー、言ってみるもんだね何事も。

それにしても初めての街だ。楽しみでたまらない。

どこ連れてってくれるのかな。

急いで着替えて戻ってきた共有区画。

あの人は先程までと全く同じ姿勢でお茶を啜っていた。

「ああ、来たな。じゃあ早いところ行くか。そう遅くなるわけにもいかないからな」

「ねえねえ、どこ連れてってくれるの?」

「適当に買い物だなー。そろそろ食材も減ってきたし、揃えておかんと」

前を行く彼の後ろを足取り軽くついていく。

あれ、でもこっちは外に通じる道じゃない。

目的地を疑問に思いながらも辿り着いたのは、ドクターの研究室だった。

いつもと変わらない様子で空間モニタを見つめるドクターは、意外な来客に驚いているようだった。

「ジェイル、トランスポーター使うぞ」

「構わないよ。行き先はどこにするんだい」

「第97管理外世界」

「うん? 今日はもう帰るのかい」

「いや、ただの買い物だよ。セインが街に出てみたいって言うから、せっかくだからホームで案内する」

「ああ、そうなのか。確かに彼女を外にやったことは無かったね。面倒をかけるが、よろしく頼むよ」

「いいさ、それが俺の役目だ」

そっかー地球かー。

第97管理外世界って、ちょっと前にこの人捕まえに行ったところだよね。

データで見たクラナガンとかに比べると大分田舎のように感じたけど、それでも楽しみなことに変わりは無い。

二人の話を聞きながら、これからのことに思いを馳せる。

「じゃあ、帰りは自分で転移してくるよ」

「セインも黒煉君の言うこと良く聞くんだよ」

「わかってるよドクター。行ってきまーす」

こうして私の初めてのお出かけが始まった。

といっても、転移して最初に目に入ったのは唯の植物の群れ。

もっと言えば、森でしかなかった。

「何ですここ」

「知っての通り、第97管理外世界は魔法文化が無い。然るに、転移地点は多少街から離れたところにしなければならない」

だったらもっと別の次元世界に行けばいいのにと思わないでもない。

「30分も歩けば市街に出るから、ラボから商業地区に行くよりずっと近い。それにここに転移したのにもちゃんと意味はあるんだぞ」

短的な説明だけしてから歩き出し、ズンズン先を行く彼を追いかける。

もう、この人歩くの早いよ。

口には出さない愚痴を頭の中で零して5分ほどすると、少しずつ視界が開けてきた。

そうして私達が出たのは公園の一角だった。

「うっわー、すごいすごーい!!」

高台にあるらしいここの展望台からは、街の全てが見渡せた。

眼下に広がる街並みはデータや画面越しに見るものとは違い、確かな現実感を持って私の中に記録される。

ちゃんと人が生活しているということが、肌で感じ取ることが出来る。

向かって真っ直ぐの一面は、どこまでも続く海が広がっていた。

空とは違う、言葉では表現できない素敵な青。

吸い込まれそうとよく言われるらしいが、それも今ならすごく良く分かった。

一人ではしゃいでいると顔の横から一本の腕が伸びてきた。

「あそこに一つでかい建物があるだろ。ちょうど向かって一時の方向。あれが俺の住んでるマンションだ。

 そこから少し左にずれて街中に広い土地がある。あれが俺の通ってる学校だ。

 更に左に移って海沿いにあるのが、海浜公園で――」

目立つ場所を一つ一つ示して説明をしてくれる。

目ぼしい場所は後で案内してくれるらしい。

「早くしてくださいよっ! 時間はあまり無いんでしょう!」

少し前まで感じていた不満も吹き飛んで、駆け足で高台を降りていく。

「うわっ、化石燃料車なんて走ってるんですか!?」

「まだ技術が発達してないからな。それでも――」

旧式な機械に驚きを隠せなかったり、

「あそこって何ですか」

「ああ、あれは――」

ゲーセンと呼ばれる娯楽施設で遊んだり、

「試食? これって食べても良いの?」

「大丈夫だよ。でも、あまり――」

食品売り場の試食コーナーを全制覇したり、

「服ってこんなにあるの!?」

「そりゃあ、一張羅じゃやってけないだろ。個人の趣味だって――」

たかが着るものの多種多様さに、自分の趣味を自覚したりとはしゃぎたおした。

「あー、流石に疲れたー」

「あれだけ動けばな。まあ、初めてのお出かけなんてそんなモンさ」

最後に来たのは海沿いの大きな公園。確か、海浜公園と言っていたか。

他の姉妹には内緒だと言って買ってもらった、タイヤキと呼ばれる御菓子。

この黒い餡子というのが甘くて、皮の食感と相まってすごい美味しい。

でも、ふと疑問が浮かんだ。

「どうして貴方は、私達にこんなことをしてくれるんですか」

「んー、どうかな。自分でもよく分かってないが、最近心境の変化があったんだよ。もっと感情前面に出して、人生楽しんだ方が良いかなって」

「それが、私達と関係が?」

「直接的ではないが、間接的には間違いなくあると思う。それに人生楽しめなんて、俺一人に限った話じゃないからな」

言いたいことがよく分からなかった。

続けて疑問を投げかけようとしたが、一足先にタイヤキを食べ終えた彼から、逆に質問をされた。

「どうだった、外に出た感想は」

「楽しかったです」

それは、意識することも無く口から出た言葉だ。

「本当に楽しかったです。それこそ、今までの人生損してたと思うぐらいには……あ」

自分で言って、自分で気付いた。

私の様子に笑顔を浮かべている。

「別にお前達の感情全てがプログラムされてるわけじゃない。ジェイルは変態な上に悪趣味だが、決して悪人じゃない。

 今お前が感じている楽しいというのは、間違いなく心から発せられる感情だよ。

 俺は、お前達にそれを教えたい」

私がアホだからなのかはわからないが、彼の言っていることを完全に理解することは出来ない。

でも、何となくしたいことは分かった。

つまり、私達と一緒に楽しいことがしたいということだ。

それだったら、もうどんとこいだ。

いくらでも付き合ってあげるよ、黒煉兄。















 ◆◇◆◇◆◇◆















「何をしているんだい」

「ああ、お帰り。ちょっと備品借りてるぞ」

研究室に戻ると、普段は私かウーノしかいない空間に、どちらとも異なる一つの影があった。

先日出会ったばかりの、私の弟。

「そうだジェイル、お前って機械工学もできるのか」

「機械? 専門は生体工学だから、そこまで詳しいとは言えないな。まあ別の分野でも、そこいらの天才には負けるつもりは毛頭無いよ」

「大した自信だ。さすがは幻の魔法世界アルハザードの堕とし子」

「幻じゃないだろう。ここに確かにその証がいるんだから」

「くく、違いない」

私の皮肉に僅かに笑みを見せ応える彼は、だがその笑みは聊か詰まらないものになってしまっていた。

まったく、気に入らないことをしてくれたものだね管理局も。

せっかくいくつかの偶然の上で巡り会えた兄弟をこんな状態にしてくれるとは。

手を貸してもいいが、精神医療となるとココロのつくりがどこかおかしい私には難しいところだ。

人間の技術というものは、自分で実感できないものだと途端に精度が落ちてしまうからね。

なにより、彼自身がそれを望んでいないようだから。

だったら、私がお節介を焼くというのも無粋なものだろう。

求められたら、進んで力になろうと思う。

だがそうでないならば、それは娘達の役目だ。

「お前、機械人形って造れるか」

感慨に耽っていると、質問の続きが来た。

「アンドロイドかい。アーキテクチャを造るだけなら資材も揃っているし、すぐ出来るよ。でも駆動プログラムを組むのに時間がかかるね」

また機械人形とは、変なものに興味を持ったね。

「プログラムは要らん。まっさらな素体があるだけで良い」

「それだと何に使うんだい。身体だけあっても、それはまさしく唯の人形に過ぎないよ」

「ちょうど一人分な、あぶれた迷子のAIがいるんだよ。なんとかして身体用意してやれないものかと思ってさ」

AIに対して迷子という形容を使うのも珍しいな。

人工知能というのは、元々何かの枠組みに入れて制御させるために組まれるものだから、それ単体が余るということはそう無い。

「必要なら用立てはするよ。性能面で要望はあるかい。出来る限りそれに沿うようにはしよう」

「肉体強度は全く脆くても構わん。逆に、演算能力だけは限界まで上げてくれ。アルハザード級とは言わんが、それこそ古代ベルカ級は欲しい」

「出来なくはないが、また随分無茶な注文だね。いいよ、やってみよう」

「あと外装は指定する。これと全く同じにしてくれると助かる」

目の前に空間ディスプレイが展開され、そこに映し出される3D映像データ。

女性体か。

「これは君の趣味かい」

「まさか。確かに好みのタイプだが、本人の希望だよ」

「ふむ、こういうのが好きなのか。なら次の娘を造る時は君の意見も参考にしてあげよう」

こちらの気遣いにも、いらんと一言で一蹴されてしまった。

それにしても古代ベルカ級か。

それだけのスペックが必要なことをやろうとしているのか、それとも今あるプログラムを起動させるのにそれだけ要求されるのか。

いずれにしても、少し面白そうなことではあるね。

評議会からの依頼が多少遅れることになるが、別に一向に問題ないね。

かわいい弟からの頼みだ。

兄として、こんなに嬉しいことは無いよ。

「あと一つ、生体工学と言っていいか分からんが、聞きたいことがあるんだ」

思わず笑みを浮かべてしまいそうなほど、気分が高揚しているところに、再び彼の問いかけが発せられる。



「生物のリンカーコアを抽出して、それを他のもの、例えばデバイスコアに造り替えるってことは可能なのか」



「…………なんだって?」

今、彼はなんと言った。

既存の生命のリンカーコアからデバイスコアを構築する?

実に、それは実に興味深い発想だ。

それこそ、今までの魔法科学を更に一つ上のステージを押し上げることになりうる閃きだ。

可能となれば、今までの常識が覆るかもしれない。

私ですら思いつかなかった、ヒトが神に近づく路。

リンカーコアはその厳密な構成というものはまだ解明されてはいない。

こうすればこういう反応が返ってくるといったマニュアルのようなものがあるだけだ。

今までの研究成果を用いれば、それからデバイスコアを構築するのも不可能ではない、と思う。

だが、それは決してどこの次元世界でも受け入れられない。

どんな場所であろうと、生命倫理という価値観が存在する限り許されることは無いだろう。

それは、狂気の理論。

『リンカーコアには、その生命の魂が宿っている』

立証されてはいないが、研究者の間では古くから信じられている考えだ。

リンカーコアを通して発現する魔力の色は、まさしくその生命の魂の色なのだと。

私も鵜呑みにはしていなかったが、だからといって真っ向から否定する気も無い。

研究を通して、そういうこともあり得ると推測できるからだ。

そして、それを造り替えることはつまり、

『魂の陵辱』

そう言っても過言ではない、神への反逆ではないだろうか。

「それは必要なことなのかい」

「どうしても、という訳じゃないな。ただ、有ったら良いと思う」

そう言ってコーヒーを飲む彼の瞳に、何が映っているのだろう。

私には分からない。

出会った当初はそうでもなかったんだけどね。

そもそも、元からこんなのであればこちらから会おうとすらしなかった。

本当に、不愉快な事態になったものだよ。

娘達も彼のおかげで順調に成長しているというのに。

別に、彼とはずっと一緒に生活をしている訳でもない。

彼には彼の世界での生活があるから、この研究所に来るのはそう頻繁ではない。

その多くない機会の間で、弟は私達の中心になってしまった。

ウーノはどことなく、感情の機微というものを理解し始めてきた。

トーレも戦闘訓練の合間に、女性の嗜み講座を受けているらしい。時折、兄上ー!!、と羞恥の叫びが聞こえてくるが楽しそうではある。

クアットロも、なんだかんだと文句を言いながらもこの生活に満足しているようだ。

チンクは以前から姉として行動するようにしていたが、最近はその振る舞いにも幅が見えてきた。

セインはその性格ゆえか、絞られることも多いが以前にも増して活発になった。

ディエチは元々争いを好まない娘だから、こののんびりした速度は合っていると言っていた。

機械でもやはり心というものはあるんだ。

私自身、昔のことをよく思い出すようになった。

ねえ、■■■■。

家族というのは、色々大変だね。

それでも、家族のためならどんなことでもしてあげたいって思える。

だから、やっぱり家族は良いものだと思えるよ。

できれば、この風景の中に君もいてくれたら良かったのにね。

君と私で、年の離れた弟と妹を守るんだよ。

それは、とても素敵なことだと思う。

でも、それは叶わない夢だから、私は娘達と彼のココロを助けるよ。

君はそれを見守っていて欲しい。
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