現在リリカルなのはの二次創作と日記を掲載。そのうちオリジナルの恋愛物も書くかも……
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空の少年 08 The First
空気の抜けるような音と共に目の前のドアがスライドする。

この扉をくぐるのも今日で1週間連続だな。

春休みも終わってしまったから、これからは時間を作るのが難しくなった。

だが、その心配も杞憂。予想よりも早く済んでよかった。

あの二人が色々と手を回してくれていたらしい。

お互い利用しあう関係とはいえ、ここまで世話になると素直に感謝の念が浮かんでくる。

今度何か菓子でも作ってくるかな。好きなもの聞いておこう。

中に入ると、そこにいたのは三人。

マリエル・アテンザ技術官

ヴァネッサ・スクーデリア准将

アイズ・レヴェントン提督









「お待ちしていましたよ」

「さあ、断罪の剣を抜いてもらおうか」










ようやく俺は、力を手に入れる。















魔法少女リリカルなのは 空の少年 08 The First















「さて、いこうか」

そう告げて構えるのは、遂に完成を見た俺の刃。

デバイスでありながら、持ち手である柄や鞘の拵えは芸術品である日本刀の趣を残している。

純粋な刀に比べればデバイスが組み込まれている分、構えた際の感触は重く感じる。

だが、足繁く通ったおかげだろう。重心が要求通りの位置にあるため、取り回しはかなり良い。

鞘を腰に挿し、一思いに引き抜く。

現れた刀身は、この中で俺だけに馴染み深い日本刀。

俺自身の魔力光に合わせて黒みがかった刀身。闇夜に紛れれば、視認し難いところも実に俺向きである。

サイズで言えば、打刀というよりも太刀、大太刀に近い。

それでも反りは浅めに設計しているから、どちらかに分類するとすれば打刀ではあるか。

デバイスコアは柄尻にしつらえた宝玉。カートリッジシステムは刀身の鍔元に置いた。

魔力自体は個人で余裕があるため、カートリッジシステムはあくまで補助のブースト。

そのため装填するカートリッジは口径の小さい、魔力容量の少ないものだ。

ちょうど鍔元の峰部分に小さい筒が食い込んでいるような状態だ。

「スタンバイモードは無いのかい」

首元からペンダントトップに姿を変えていた自身のデバイス、スターゲイザーを取り出しながら、スクーデリアが尋ねる。

「一応有るには有るが、このままで基本形態だ。待機状態にしているときにこそ、むしろ魔力を消費する」

確かに俺は魔導師になるべく創られたが、ここまで退魔士、ないしは剣士として成長してきた。

だからこそ、提げるのは明確な形を持った武器でありたいと思った。

「まあ、そんな感じの無駄な拘りだよ」

「いや、言いたいことは分かる」

俺の説明を聞きながら、共感を覚えてくれたらしいシグナムが頷きを見せる。

レヴェントンはさっぱり理解してくれなかった。

まあ、あいつは異端の近接砲撃魔導師とはいえ、結局のところミッドチルダの人間だ。

デバイスにはデバイスで思うところがあるのだろうが、武器の捉え方が違うのだろう。

「それで、名前はどうするんですか? 設計図のほうには何もありませんでしたが」

あー、特に何も考えていなかった。どうするかな。

この剣を以って何をするか、俺の特性を考えると……

「……ラハト・ケレブ……」

「どういう意味なんだ?」

俺の小さな呟きも聞き逃すことなく、三人とも問い返してくる。

「地球の神話にある天使の持つ剣の銘だ」

ヤハウェは禁を犯したアダムとイヴを追放した後、命の樹へと続く道をを守るために、エデンの園の東に智天使ケルビムと炎の剣を置いた。

俺が次元世界に足を踏み入れた理由。

加えて、今まで隠されていた父親の詳細、俺自身の性質から考えても、炎の剣というのもそう遠くはない。

炎の剣というのも、ヘブライ語の原典では魔法の剣という表記だから、より相応しいんじゃないだろうか。

「地球の文化の詳しいところはよく分からないけど、響きのいい名前だと思うよ」

「そうですね」

「ああ。炎という意味が付いているのも実にすばらしい」

一人だけ別のところに感心しているが、まあ、放っておくのがいいか。

「じゃあ、次はバリアジャケットですね。用意してありますか」

「一応、プログラムは組んできた」

一度納刀して、腰から抜いて眼前に構える。

「システム起動」

その言葉と共に、真紅のデバイスコアが輝き、明滅し始める。

しばらくすると女性の電子音声が返ってきた。

『おはようございます。はじめまして、マイロード』

「ああ、これからよろしく。お前の名前が決まったよ。ラハト・ケレブだ」

『了解しました。固体名称登録"ラハト・ケレブ"……登録終了。』

「基本的なデータは入れてあるが分かるか?」

『はい。問題ありません』

AIとは別にアコンプリスの記録を移してあるから、データベースとしては申し分無い筈だ。

「バリアジャケット頼む」

『かしこまりました』

返事と共に、俺の体が魔力と同じ黒の光に包まれる。

光が収まった後には、長袖の首下まで覆うシャツにレザータイプのパンツ。

身体にピッタリと張り付くベストをシャツに上に羽織り、両手にも締まった薄手のグローブ。

パンツの上にはふくらはぎほどまでの長さの腰布が巻かれている。

「真っ黒だね」

「真っ黒ですね」

「真っ黒だな」

そう。三人が言うように、今まで挙げたもの全てが黒で統一されている。

外気に晒されているのは顔のみ。腰布を除けば、実に退魔士である皇らしい服装だ。

「どこかおかしいか」

個人的にはかなりいい感じではあるのだが。

「いや、らしいと言えば、らしいんだろうが……」

「うん。これ以上無いほど似合っているんだけどね……」

「どこか納得できないものがありますね……」

そんなことを言われても困るな。

そもそも、俺に美的感覚を求めるのもおかしい話ではあるし。

「まあ、いいか。戦闘訓練に入ろう。

 とりあえず、私達の相手をそれぞれ一時間ずつ。

 シグナム君はいいだろうが、私とアイズ相手にそれだけの時間持ってくれるかどうかは知らないけどね」

言ってくれる。

だが、あながちそう間違った認識でもないだろう。

この二人相手に一時間持てば管理局では余裕でエースを張れるだろう。

SSSランクは決して伊達などではない。

それでも、泣き言を言うことは出来ない。

俺は立ち止まってはいられないんだから。










 ◆◇◆◇◆◇◆










流石に疲れた。

もう8時か。4月も中旬に入ったとはいえ、まだまだ夜は冷える。

スクーデリアがアースシェイカーと呼ばれる由縁を思い知った。

こちらが視認出来ないような超長距離のアウトレンジから、一瞬にして閃光がこの身に迫る。

ひたすらそれを本能の赴くままに避け続けても、いつの間にか限定空間に追い込まれている。

そうしたら最後、測るのも馬鹿馬鹿しくなるほど巨大な砲撃に消し飛ばされる。

はじめの直射魔法でも、閃光と言ったが過小表現もいいところだ。

普通の空戦魔導師であれば、必殺の砲撃と言えるような重い一撃。

ひたすらそんなものに晒されていれば、そりゃあ後は被災地の様相をおびるのも仕方の無いことだ。

模擬戦をやるためにわざわざ未開世界に行くのも納得だ。

悔しいが、ものの15分程度でスクーデリアとの模擬戦は終わった。

その後に控えるのはレヴェントン。

本当に砲撃魔導師の癖に、それを主体にした近接戦闘を行ってきた。

それを可能にしたのは、奴の恐ろしいまでの魔力収束速度。

一瞬にして必要十分の魔力を変換して、術式に叩き込む。

デバイスにしても、全体で見ればそう大したものではない。

OSも特別なものがあるわけでもないし、容量が大きいということも無い。

ただ、CPUだけが尋常ではなかった。ひたすらに演算速度を追求したワンオフ。

一般のものに比べて、何年先を行っているんだと思う。

その癖にストレージではなく、ちゃんとしたインテリジェントデバイスだ。

"ソードブレイカー"

近接魔導師のプライドを粉々にぶち壊すには実に相応しい名前だ。

加えて、デバイスの反応速度を過不足無く使いこなせる奴自身も尋常ではない。

間断なく放たれる砲撃の中には、デバイスを介さず直接自らで処理したものも多分に含まれている。

それは全くの不意打ち。デバイスの処理にばかり気をやっているとすぐに落とされることになる。

スクーデリアに比べれば自分にとっても得意なレンジだったこともあり、ある程度までは保たせたがじわじわ削られ続けて37分で決着。

最後の相手はシグナム。

以前本気で殺し合いをした上に、日頃から剣を交わしている間柄だ。

お互い相手の戦いの流れをいうのも知り尽くしている。

結果、一進一退の攻防が続いたが、56分で破られた。

そもそも、五ヵ月半前に勝負が出来たというのが奇跡なんだ。

まだまだ俺の練氣もなっていない。戦氣術であれだけの成功率を出せたことに自分でも驚きを隠せなかった。

あいつは今でも自分の負けだと言っているが、まだまだ実力をあいつのほうが上だろうな。

一通り三人の相手をした後は、ひたすらスクーデリアとレヴェントンによるいじめだった。

二人の射撃魔法を、その場から動かず延々と相殺し続ける。

あいつらも上手いもので、本当に俺が処理しきれる限界ギリギリの量しか撃ってこない。

ようやく慣れてきたと思えば、向こうも的確にそれを察して弾幕を増やす。

終わることの無い悪夢だった。

魔力が空になってぶっ倒れても、しばらくして少し回復すればすぐに次のラウンドに入る。

おかげで魔力の処理速度も上がり、魔力の過剰、過少消費も無くなった。

俺の当面の課題が魔力運用に慣れるというものだから、この訓練方法は間違っていないのだろうが、本当にきつかった。

明日以降は、二人の信頼のおける魔導師を相手に連日模擬戦を重ねるらしい。

自分でも、誰でもいいから喧嘩を売ってこいと言われた。

フェイトやなのはにでも頼むかな。クロノでもいいか。

今日の反省とこれからの予定を考えながら、人通りの少なくなった街を歩く。

管理局から戻ってきてもここの所忙しかったから、食事を作ろうにも家に食材自体が無かった。

仕方なく外で済ませようと、部屋を出てきた。

疲れで考えることも億劫になって、適当な店で食事を取って早々に帰途に着く。

だが、不意に囲まれた気配にその足も動かすことを止めることになった。

囲まれたといっても、はっきりと認識できるのは二人だが、おそらくもう何人かいるな。

「……何か用か」

立ち止まって一本道の前後に意識をやりながら、答えを期待していない問いを虚空に向かって投げかける。

予想通り言葉による返答は無く、代わりに返ってきたのは殺気と後方から数本のナイフ。

「起きろラハト」

前へと身を投げ出しながら、ブレスレットに形を変えていたラハトを戦闘状態にしてバリアジャケットを纏う。

「IS発動"ランブルデトネイター"」

身体強化をしながら振り返りざまに切り払ったナイフが足元へと落下した直後、そんな呟きが聞こえた。





瞬間、地面に落ちたナイフが発光して猛烈な音と共に爆発した。





「なにっ!?」

ジャケットへの魔力供給を増やし、さらに後方へ飛び退ることで衝撃の大部分は受け流したが、多少はダメージが通った。

着地すると同時に、先程から感じていたもう一つの気配が急速に接近してきた。

「IS発動"ライドインパルス"」

相手を視認した直後、またもそんな呟きと共にその影がさらに加速した。

咄嗟に、手首であろう部分から伸びる紫色の一対の翼にラハトを叩きつける。

くそっ、いい動きをする。

急加速のエネルギーも十分に体重に乗せた一撃。

相手側に吹き飛ばされた分、さらにその威力は重くなる。

押し負けることは目に見えたため、即座に重心を右にずらすと共に刀身を左に傾けて流す。

相手もそれを予期していたかのように、流れに逆らうことなく掬い上げるような右の回し蹴りが左脇腹に迫る。

加えて、もう一人の敵からも先程と同様のナイフが投げられる。

避け切れん。

『vanishing speed』

突然体が軽くなる感覚に襲われた。

ラハトがこちらの指示を待たず、個人の判断で高速機動魔法を展開したようだ。

よくやった!! 今日出来たばかりなのに、良い判断だ。

二人目の影と入れ違うように走り抜け、距離をとってから後ろにいる二人に向き直る。

ようやく、まともに姿を見ることが出来た。

真っ先に目に付いたのは、青と灰。

両者共に青を基調とした肌にフィットするボディスーツに身を包んでいる。

先程近接戦を挑んできたほうは、あの紫の短髪の方だろう。

かなりの長身だな。180ぐらいありそうだ。さっきの一撃も重いわけだ。

体付きや筋肉の付き方からして陸戦だけじゃなく空戦も出来る格闘タイプだろう。

そしておそらくもう一人が、ナイフを投げてきた奴か。

ボディスーツの上に灰色のロングシェルコートを羽織っている。

かなり長い銀髪をそのまま背中に流している。

しかしこっちは……

「やけにコンパクトに纏まっているな」

下手したら130ないんじゃないか。

場違いな俺の呟きが聞こえたのだろうか、露骨に顔を顰めている。

「中距離戦に身長は関係ない」

ああ、気にしているのか。悪いこと言ったな。

だがそれよりも気になることがある。

「……女か……」

そう、体付きを見れば一目瞭然。今の襲撃者はどちらも女だった。

やり難いことこの上ない。

「お気になさらずとも結構ですよ、黒煉様。貴方は、すぐに私達に倒されるのですから。

 抵抗されなければ、そう傷付けるつもりもございません。会わせたい方がいるだけです」

そう言われてもね。

いきなり喧嘩売られて、そのままその事実を放置して付いてくというのは、あまり納得が出来ないな。

まあ、丁度いいといえば丁度いい。

実戦の相手になってもらおうじゃないか。

「スフィア展開」

『イエス、マイロード』

瞬時に、30個ほどの黒いスフィアが俺の周囲に浮かび上がる。

「残念です、黒煉様。行くぞ、チンク」

「ああ、トーレ。援護は任せておけ」

長身の方がトーレで、コートのほうがチンクか。

俺の行動に二人も再び戦闘体勢に入る。

すぐさま詰めてくるトーレに、飛行魔法を展開して距離をとる。

自身も近接戦が得意分野であるが、わざわざ相手の専門領域でやりあうこともない。

確定ではないが、中遠距離の攻撃手段を持たないであろうことを考えれば、当然の選択だ。

トーレもこちらを追って空中機動を始め、合わせて後方のチンクからも先程と同様にナイフが高速で投げられる。

とりあえずは……

「薙ぎ払え」

『Shadow Vulcan』

そう細かく狙いはつけずに、弾幕を張る。

トーレの足を止めることも重要だが、それよりも確かめたいことがある。

展開していたそれぞれのスフィアから、高速で幾つもの魔力弾が放たれる。

穴の多い弾幕の隙間を容易く縫ってトーレが迫るが、それも一定の距離をとるように移動して凌ぐ。

トーレの後ろへと抜けた魔力弾が、追随していた投げナイフに衝突して消え去る。

ナイフのほうも勢いを無くして地面へと落ちる。

つまり、衝撃を与えれば必ず爆発するというわけではないということか。

おそらく、任意で操作できるのだろう。余計厄介ではあるな。

それを確認している間に、トーレに詰められた。

仕方なく、ラハトを構えて相手にする。

飛行魔法は解除して、空中に足場を生み出す。

まだまだ、空中戦での剣の動きを把握できていない。

擬似的であっても、地上と同様に動ける環境を作る方がやりやすい。魔力の節約にもなる。

下から迫るトーレに対して、上段からの振り下ろし。

先程と同じく手首から生えた紫の羽でこちらの剣を遮る。

高低差で明らかに俺の方が有利だというのに、こうも容易く受け止めるとはな。

手首を絞り、瞬間的にさらに体重をかけて押し返す。

勢いに負けて僅かに下降するトーレに、体勢を立て直す隙を与えないようすぐさま追撃をかける。

そう、トーレもチンクも考えただろう。





『Vanishing Speed』





高速機動魔法を展開して、一瞬にしてチンクとの間合いを詰める。

「くそっ!?」

驚きに二人の表情が彩られる。

当初から先に潰すのはチンクだと狙いをつけていた。

トーレの相手をするように見せかけながら、チンクから大きく距離をとらないように動き回る。

僅かでも体勢が崩れたところで、相手をスイッチ。

一気に畳み掛ける。

「斬撃強化」

ラハトがすぐさま漆黒の魔力を刀身から迸らせ、それを目の前の女に叩きつける。だが、





それが当たる瞬間、俺の体から全ての魔法効果が消え去った。





ラハトに纏わせた魔力も霧散し、身体強化も解除されて、それまでの勢いを生身で受け止めたため、体が流れる。

何とか体勢を立て直そうとしたところに、不意に何かに躓いた。

躓いたというよりも……掴まれた。

足元を見ると、地面からは青いグローブに包まれた人の手首。

それが、しっかりと俺の右足を掴んでいた。

「捕まえたよ、クア姉」

『よくやりました、セインちゃん。今ですよー、ディエチちゃん』

『任せて、クアットロ。IS発動"ヘヴィバレル"』

今まで聞こえていなかった、新たな声が三つ耳に届いた。

爆発的に悪寒が背中を奔り、直感に従って右の彼方に目を向ける。

光の点が高速で近づき、その大きさを見る間に増していく。

避け切るのは厳しい。





そのまま俺は、光の奔流に飲み込まれた。















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