現在リリカルなのはの二次創作と日記を掲載。そのうちオリジナルの恋愛物も書くかも……
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空の少年 01
日の光がわずかにしか地面まで届かないような鬱蒼とした森の中、黒と赤の二つの影が駆け抜けていく。片時も止まることなく、且つ尋常でない速度で移動しているため、それぞれの細かい特徴を捉えることは出来ない。

時折影が交錯し、その度に周辺へと血が飛び散っていることから、影同士で争っていることがわかる。

幾ばくかした後、黒い影から澄んだ声が聞こえた。
「三鎚(みづち)」

次に影が重なった直後、赤い影が中空に静止した。

そこでようやくその容姿を捕らえることができた。

明らかに人のサイズではない。身の丈で3mは超えている。

流れ出ている血のせいだけでなく、下の皮膚ももともと赤い。

その肉体も筋骨隆々としていて、コンクリート製の壁でも平気な顔をして粉砕しそうだ。

まさに、物語に登場する鬼そのものだった。

だが、人々に恐怖を与える存在であるはずなのにもかかわらず、その表情は驚愕に彩られている。

姿を確認したのもつかの間、またも黒い影から声が上がる。

「五槻(さつき)」

同時に影から、いくつもの礫が放たれ、鬼に無数の風穴が開く。

「六華(りっか)」

瞬間、鬼の体が裂かれた。二つが四つに、四つが八つに。見る見るうちに、その体を小さくしていく。

わずかに反射された陽光から、何かしらの刃物で解体されているのがかろうじて理解できる。

そうしているうちに、鬼の姿は消滅していた。周囲に飛び散っていたはずの血の痕も見えなくなっている。

ようやく黒い影も立ち止まる。ちょうど木々の密集しているところのため、やはり姿は見えなかったが、それほど背は高くはなさそうだ。

影が息をついたところ、

「あの程度の鬼が相手では、簡単過ぎたな」

その言葉とともに、次の戦いが始まった。





 ◆◇◆◇◆◇◆





日曜の昼下がりの商店街を一人の子供が歩いている。

風貌からして年の頃は10歳前後であろうが、その見た目に反して歩く先を見据える眼差しは不相応な落ち着きが感じられる。

伸ばした黒髪を纏め上げて簪で留めており、下ろせば腰はおろか膝まで届くだろう。特に量が多いというわけではないのに厚みのある髪の束が、それを容易に想像させる。

手入れも欠かしてはいないようで、柔らかな午後の日差しをキラキラと反射させて、洗い立てといわんばかりに天使の輪を作り出している。

そんな愛らしい外見をしているのに、提げている荷物が似合っていない。

明らかに実用性重視のドラムバッグに、自らの身の丈ほどもある竹刀袋。バッグのほうは旅行か何かしらの理由で泊まりに出かけていたと考えればいいかもしれないが、後者はあまり想像がつかない。

竹刀というなら、大荷物の中に防具を混ざっているはずだがその気配はない。

加えて、全部あわせればそれなりの重量があるだろうに、その足取りは不安なところはなくしっかりとしている。

そうこうしている内に、目的地に着いたのだろう。ひとつの建物を前にして立ち止まり、バッグを背負いなおして中に入っていく。

その建物には、

『喫茶 翠屋』

そう記されていた。















魔法少女リリカルなのは 空の少年 01















カランカラン

カウベルの音とともに店内へと足を踏み入れる。嗅ぎ慣れた香りに、少し高ぶっていた気持ちが安らいでいくのがわかる。

予想していたよりも入っている客の数が少ない。何かあったかと店内を見渡してみると、二組の男女がひとつのボックス席についているのが目に入った。

一方はよく知った人たちだが、もう片方には見覚えがない。男性は盛んに手元のノートにメモを取り、女性は値の張りそうなカメラを携えている。

「おかえり。今回は意外と早かったね」

そこまで見たところで、寄ってきたウェイトレスに声をかけられた。

慣れ親しんだ笑顔で、心地良く出迎えてくれる。それだけでも

「ただいま、美由希さん。本当は昨日のうちに帰ってこれたんですけどね」

簡単すぎたなと呟いて、休み無しに襲ってきた凍夜さんには、恨み言が出るのを隠せない。

「ちゃんと仕事したのに駄目と言われて、訳が分かりません」

「いやー、でもそれだけ期待してるってことだよ。だからこそ、凍夜さんも期待しちゃうんじゃないかな」

そうからからと笑いながら応えてくれるが、全く緊張感がない。

くそぅ。所詮は他人事なのか。

「じゃあ、いつも恭也さんが美由希さんに厳しいのも同じことですね」

「それだと嬉しいんだけどねー。恭ちゃんのはほとんどがただのいじめだよ」

見た限り、あれは美由希さんに何の関係もない八つ当たりも混じってるはずだ。

「これって私怒ってもいいよね?」

彼女自身も気付いているのだろう。自身に降り掛かっている理不尽も思い出してきたようだ。

「別に構いませんが、怒って何とかなるんですか?」

「そうなんだよねー、最終的にそこに行き着くんだよねー」

それはこちらにも言えることだった。

結局互いの不幸度を再確認しあうという不毛な会話になってしまった。

「まあ、それは追々考えていくとしよう。それで、今日はどうする? ここで食べてく? それとも持ち帰り?」

「両方でお願いします。ホットのモカとチーズケーキを。それと、シュークリームを4つ包んでください」

「かしこまりました。ご注文を確認させていただきます。ホットのモカとチーズケーキをおひとつずつ。

 お持ち帰りでシュークリームを4つでよろしいですか?」

今までの態度が嘘のように、見事なウェイトレスへと変貌して注文を復唱する。

「はい」

「では少々お待ちください」

そうして彼女は、45度の完璧なお辞儀をして奥の方へと戻っていった。



ずっと荷物を担いでいた肩が少し痛んだ。

注文したものが来るのを待つ間に、案内されたカウンター席に座り、一息ついて肩の力を抜く。

先程話していた女性は高町美由希。幼稚園時代から世話になっている高町家の長女だ。

高町家は先ほどボックス席に座っていた見知った側の男女、士郎さんと桃子さん夫婦に、上から恭也さん、美由希さん、なのはの5人家族。

ここ翠屋も士郎さんがバリスタ、桃子さんがパティシエールとして経営している店だ。

どちらの腕もいいし、店の雰囲気も穏やかで過ごしやすいため、普段はかなりの賑わいを見せている。

まれに雑誌の取材も来るため、客の大半は女子高生や近隣の奥様方になり、男単独では少し入りにくいかもしれない。

ふと、先程の男女二人組が取材の記者だと思い当たった。

この店も繁盛しているな。

そんな取り留めのないことを考えながら、奥で準備をしている美由希さんを眺める。

腰あたりまで伸ばした髪をみつあみにしており、流行に合わせて髪を染めるということはしていない。

こういっては何だがファンッションというものをあまり意識していないような、鬢底めがねをかけており、典型的な文学少女といった風だ。

それでも、地毛が元々茶色がかっていて、動きもきびきびとしているので、野暮ったいという印象は感じられなかった。

こうして何気なく動いているときでも、重心がまったくぶれていない。歩いていても全く肩の高さも変わることがなかった。

何でもないようにリストバンドをつけているが、あの中もかなりの量の暗器が仕込まれておりそれなりの重量のはずだ。

一番近い目標ではあるが、まだまだ先は長いことを痛感する。

この高町一家、平和そうな顔をして実は御神流、正式名称永全不動八門一派・御神真刀流、小太刀二刀術という総合殺人術を継ぐ家である。

一家といっても、士郎さん、恭也さん、美由希さんの三人だけだから、語弊はあるかもしれない。

有名な流派らしく、うちの実家ともお互い直接的な面識はないが知識として知っているようだった。

野蛮な家系みたいな言い方をしたが、うちも似たり寄ったりなので気にしていない。

御神流の教えを請うているわけではないが、時折組み手の相手もしてもらっている。



そんなことを考えている間に、注文していたコーヒーとケーキが運ばれてきた。

「お待たせいたしました。モカとチーズケーキになります」

「ありがとう、美由希さん」

礼を言って、運ばれてきたモカを一口すする。

そのまま下がる思いきや、空いていた隣のスツールに美由希さんが腰を下ろした。

「いいんですか、油売ってて」

「ん、まあ今の時間はね。お昼も過ぎたし、ちょっと休憩」

伸びをしながらこちらの疑問に答える。

「そもそも、表の看板CLOSEにしたからね。今日この後は、お持ち帰りのみ営業」

「ああ、やっぱりあれ、取材なんですか」

先ほど考えていたことを聞いてみた。

「うん。今回はあんまり大きいところじゃないよ。今度の水曜発行の市内向けのフリーペーパーだってさ。駅前の観光案内所でも置くみたい」

さっきの推測は正しかったらしい。次の水曜となると、来週末の翠屋は繁盛しそうだ。また手伝いに入ろう。

そんなことを思いながら、フォークを手に取りお待ちかねのチーズケーキを口にする。

ゆっくり舌の上で溶けるのを感じながら、わずかな情報も逃さないよう丁寧に味わう。

「う~ん、わからん」

「まだ悩んでるんだ」

聞こえてきた言葉に横を向くと、呆れたような笑みが目に入った。

「まだ、と言いますけどね。そうそう諦める気はありませんから」

「頑張るね、私はもう専ら食べるの専門だよ」

「その方が世界が平和に回りますから」

こちらの厳しい言葉に心当たりがあるのか、苦い顔をする。

「根に持つね。もう二年も前の話だよ」

「当たり前でしょう。何の薬も盛らずに、純粋に味覚からダメージを与えて相手を気絶させるなんて美由希さんしか出来ませんよ。あの時は本気で覚悟を決めました」

「まあ、その話は置いとこうよ。ゆっくり話すのもなんだかんだで久しぶりなんだし」

やはり、あまり料理に関しては触れられたくないか。

こう言うのは好きではないが、一般論として女性なんだから料理ぐらい出来たほうがいいと思うけど、相手の意思を尊重して話を変えよう。





別の傷口を抉ることで





「そういえば、さっき入ってきたとき取材ってもう始まってましたよね」

「そうだね。始まったのが二時で、君が来たのが15分ぐらいだったから」

まだ彼女は気づいてないらしい。

「来たときは看板がOPENになってたんですよ。おかしいと思いませんか。その時間なら持ち帰りのみのはずですよね」

こちらの意図を理解したらしい。可愛らしい額に汗が浮かんできた。十中八九、その汗の前には二文字の枕詞が付くだろう。

「士郎さんが変え忘れたんでしょうね。そういえば美由希さん、注文聞いた後に一度表に出て行きましたよね? 何していたんですか?」

自分は今最高に良い笑顔を浮かべているだろう。

「……何が望み?」

「何言ってるんですか? 生憎、美由希さんの言いたいことが皆目見当もつきません。

 でも、たとえばの話ですが、コーヒーを一杯飲んで、チーズケーキをひとつ食べれば、この口は無駄なことは話さないと思います」

それを伝えると、あからさまに彼女の顔に安堵の色が浮かぶ。

まあ、当然だろう。バリスタとパティシエールが抜けた状態の喫茶店なんて、ほとんど機能を果たしていないと言っていい。

士郎さんにばれたらちょっとした折檻コースだから、焦るのも分かる。

「そんなことでいいの?いつもお世話になってるんだし、なんだったらシュークリームのほうも出そうか?」

「別に構いませんよ。それはこちらも同じなんですから。むしろこっちのほうがお世話かけてる気がしますよ」

「そんなそんな………」

「いやいや………」

そんなよく分からない譲り合いをしていると、後ろで気配が動いた。どうやら取材が終わったらしい。

そちらに顔を向けると、たまたまカメラを持った女性と視線が合った。

わざわざ逸らすのも悪い気がしたのでそのまま固定すると、あちらの女性もずっとこちらを見つめている。

周囲の人間もこのよく分からない空間に気づいたらしく、不思議そうにこちらを眺めている。

と、女性が突然ものすごい勢いでこちらに迫ってきてこちらの手を掴む。ちょっと痛い。

「あなた!! モデルやってみない?!」

「……はぁ」

目が血走っている。ちょっと怖い。

「あなたみたいな写真栄えのしそうな娘は初めて見たわ! ぜひ私の前にあなたの全てを曝け出して!!」

セクハラだろうか。それとも純粋に頭がおかしいのか。

それと少し気になる単語が入ったような気がする。

「あなたが末っ子のなのはさんかしら?でも聞いてた特徴と一致しないわね」

うん、ちょっとわかってきた。この人は盛大な勘違いをしているのだろう。

併せて、横で美由希さんが焦り始めた気配がする。

「わたし、見ての通りカメラマンをしてるんだけどね、特にチャイルドモデルの」

そう言いながら名刺を渡してくる。桃子さんから聞いたことのあるような名前だ。

「やばっ、この人って」

美由希さんが覗き込んできて名前を見た瞬間、焦りが膨れ上がった気がする。

桃子さんはずっとニコニコしている。見た目微笑ましく見守ってるという感じだが、内心ではものすごく楽しんでいるだろう。

士郎さんは何も分かっちゃいない。いや、分かっているかもしれないが、あの人は桃子さんの犬だから、何もしてくれないだろう。くそっ、チキンがっ。

一緒にいた記者の人も、あ~あ、またいつもの癖が出やがった、見たいな態度とっている。こいつもダメだ。

「中でも、少女モデルの画ではそれなりに売れているつもりよ。あなたの愛らしさをもっと引き出してみせるわ」

ああ、決まりだ。確実にこの女は、盛大な勘違いをしている。

「あなたの名前を聞かせてくれないかしら」

そして次に、致命的なセリフを、そのふざけた口から紡ぎだすだろう。極上の笑顔とともに唇が動く。

「お嬢さん」

瞬間、この身は弾丸となって、目の前の肉を狩ろうと奔る。

が、それを予想していたのだろう。横から飛び出した美由希さんによって押さえつけられる。

「放してください」

「放せるわけないでしょっ!? 何するつもり!?」

「決まっているでしょう。この阿呆の不良品の眼球をくりぬいて、二度とふざけた台詞を吐けないように、舌捻り切って唇を縫い付けてやります」

「なにさらっとヤバイ発言してるの!? 余計解放できるわけないでしょ!!」

美由希さんと取っ組み合いになって、拘束から抜け出そうともがく。

それをぽかーんとした目で見ている記者とカメラマン。

ニコニコと見ている桃子さんと駄犬。

残っていた常連客の心はひとつだった。

なにこのカオス










数分後、少し暴れてすっきりしたため、冷静さを取り戻してカメラマンの前に立つ。

「恥ずかしいところをお見せしました。名前を伺いたいんでしたね」

「っええ、そうね」

少し気後れしているようだが、まだ喰らいつくらしい。こいつ本当に少女モデルで売れてるカメラマンか。

実に不愉快だ。

まあいい。聞きたいなら教えてやろうか。

「“俺”の名前は皇黒煉(すめらぎくれん)。正真正銘の“男”だ」
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