現在リリカルなのはの二次創作と日記を掲載。そのうちオリジナルの恋愛物も書くかも……
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空の少年 07 The Second
「すまない黒煉。待たせたか」

「いや、そうでもない。こっちこそ悪かった。突然呼び出して」

「スクーデリア准将とレヴェントン提督が手を回してくれているようで、大分自由が利く。今日の午後は准将に同行するのが仕事らしい。

 明日からは基本提督の補佐官となるとのことだ。おそらくお前も准将付きになるじゃないか」

「マジかよ……」


そんな話は聞いてない。いや、魔法戦を叩き込むために自分のところに引っ張るって言ってたな。

それが、こういうことになったのか。シグナムが来れるってのも分かってたな。

「その荷物は」

俺の横に置いてある小さな箱に気付いたらしい。

「今日会う相手に対する秘密兵器だ。中身は見てのお楽しみだな」

昨日の夜、忙しい中気合入れて作った至高の一品だ。

「そういう態度を取るときのお前は、何があっても見せようとしないからな。まあ、後に取っておこう。

 それよりデバイスの設計図は完成したらしいな。むしろそっち見せてくれ」

自分の携帯端末を操作して、彼女の方にデータを転送する。

見せているのはレヴェントンの手が加わった完成版のほうだ。

流石にあんな恥はあまりかきたくない。

「ふむ、やはりOSはこれでいくのか」

「お前と相談した時にそんな話が出ただろう。それに合わせて組んでみたんだ」

「私は形にできるとは思ってなかったのだが、流石だな。

 それでこちらがフレームか。やはり基本は刀か。しかし、どことなくレヴァンティンに似ているな」

「カートリッジシステムをどこに付けるかで、参考にさせてもらった。

 純粋に実体剣型のカートリッジ搭載のデバイスを追求するとここに落ち着くしかないんじゃないか」

「そうだろうな。私もそう思う」

しかし、これを技術局に持って行った時は軽くパニックが起きた。

まず、海の幹部が何の事前連絡もなく、いきなり顔を出したんだ。すわ、何事かってなる。

それで落ち着いたところに、この設計図を見せる。なんなんだこのシステムは、こんなもの見たことないってなった。

レヴェントンが手伝ったということにすると、ああなら仕方ない、この人なら新理論も出すだろうと収束した。

奴の言った通りになった。俺が考えたというままだったら、さらに事態が混乱していただろう。















魔法少女リリカルなのは 空の少年 07 The Second















「やあやあ、お待たせ。二人揃って、相変わらず仲が良いね君達」

現れると同時にまた変なことを言い出した。

「いやぁ、それにしてもあれは傑作だったよ。おかげで午前中は仕事が進まなくて困ったよ。笑いが込み上げてきてね」

「? 何のことだ?」

彼女の言っていることが分からないシグナムが俺の方を向いて問いかける。

「あれ、知らないのかい。実はね……」

先程俺が隠した黒歴史を早速ばらそうとする阿呆女の襟首を掴んでシグナムから離れ、小声で詰め寄る。

「いきなり、人の恥ずかしい話ばらそうとするんじゃない」

「あぁ、すまないね。うん、確かに軽率だったよ。ごめんねー、ええ格好しい」

このアマ

「お前な……」

「いやぁ、微笑ましいね。うん、そうか、君も男の子だもんね。わかった、君の面子は守ろう」

急に真剣な表情になって、そう返してくる。

「いきなりどうしたんだ」

「話に聞いていたより、ずっと熱い男だなと思ってね。多分、そうなったのは最近だろう。

 君のその変化は大事にしないといけないと思ってね」

「……」

その言葉に、咄嗟に返事ができなかった。

俺は意外と内心が表に出やすいのだろうか。

ここのところ、色々と他人に見透かされ過ぎているとも思う。

「さてと、じゃあ行こうか。シグナム君もこっちおいで。今日の君は私の護衛なんだから」

シグナムが俺の方を気にしながら近づいてくる。

スクーデリアの言ったことは、多分俺にとって重要なことなんだろう。

だが、それのどこが重要なのか、俺にはわからなかった。

まあいい。今は例の家族に会うのが最優先だ。





そうして俺たち三人は、本局のトランスポーターでクラナガンへと跳んだ。










 ◆◇◆◇◆◇◆










スクーデリアに連れてこられたのは、都市部から少し離れた住宅街。

郊外というほど遠くまでは来ていないから、適度に騒がしく、適度に静かで住みやすそうなベッドタウンだ。

その中のとある一軒家の前で立ち止まる。

かなり広いな。周辺にもそれなりの敷地面積の家が並んでいるが、その中でも広い部類に入る。

外壁を減らしガラスを多く用いて、自然光をふんだんに取り入れた総二階に建物。

庭も、家屋に見合って広々として、手入れの行き届いた芝が生えている。

植えられた樹木でちょうど日陰となるところに何脚かのベンチが置かれている。

そこまで見回して、スクーデリアが思い出したように声を掛けてきた。

「ああ、そうだ。先方には君のこと殆ど話してないからね。

 ただ単に会わせたい人がいるとしか伝えてない。結構重要な用件とは言ってあるけど」

「はぁ? お前、それは手配するとは言わないんじゃないか」

「してるじゃないか。ちゃんとセッティングしてあげたんだから。ぐだぐだ言ってないでさっさと行こう」

喋りながらその指はインターホンへ。

気の抜けた電子音が響く。この辺りは世界が違っても、行き着くところは同じなんだろうな。

そう時間を置くことも無く、女性の声が聞こえてきた。

「お久しぶりです、クイントさん。スクーデリアです」

『いらっしゃい、ヴァネッサ。鍵は開いてるから、そのまま入ってきてちょうだい』

「わかりました」

スクーデリアに促され、庭へと足を踏み入れる。

玄関へと向かうが、俺たち三人が辿り着く前にその扉が開かれた。

中から飛び出してきたのは二人の小さな少女。

似通ったところの多い容姿からして姉妹だろう。

「お久しぶりです、ヴァネッサさん」

二人のうち幾らか年上であろう娘が、元気に、だが礼儀正しくスクーデリアに頭を下げる。

薄紫のワンポイント入ったワンピースに、藍色の丈の短いジャケットを羽織っている。

ワンピースと同色のリボンをつけているが、後ろで伸びたウェッジウッドブルーの長い髪を見るに、纏めてはいないのだろう。

年下の娘は、玄関から出てくるまでは勢い良かったのだが、俺とシグナムの姿を視界に納めるなり姉の後ろに隠れてしまった。

クリーム色の半袖シャツに、それを少し濃くしたオレンジのミニスカート。

髪は姉よりも僅かに濃いウルトラマリンを、ショートカットに切りそろえている。

「久しぶりだね、ギンガちゃん、スバルちゃん。この間はごめんね、誕生日会来れなくて。

 何歳になったんだっけ」

「7歳です!!」

「……5歳です……」

妹の方がなんだか凄く怯えている。

姉の服の裾を握り締め、蚊の鳴くような声で答える。

こちらが申し訳無くなるぐらいだ。

「何かしただろうか」

その様子を見てシグナムも不安になったようだ。

小声でこちらに呟きかける。

「わからん。特に何もしていないと思うが。極度の人見知りかな……」

「だからといって、あの怯え様は……。あの年頃なら、もう少し好奇心旺盛で、物怖じしないものだろう」

道場で子供達の相手をしているだけあって、シグナムのその辺りの感性は思いの外しっかりしている。

「まあ事情があるんじゃないのか。だからこそ俺も会ってみたかったんだし」

「それはそうだが……」

二人でこそこそと内緒話をしていると、もう一人女性が出てきた。

「あらあら、いつまで経っても来ないと思ったら。ギンガもスバルも、ちゃんとご案内しないと駄目でしょう」

薄い水色のリボンで髪をポニーテールに纏めた女性。

ラヴェンダーのブラウスに、オーロラピンクのエプロンを着けている。

この人が二人を引き取った夫婦の奥さんか。

駄目だな。一目見ただけで、暖かい人なんだと分かる。

二人を本当に大事にしているのがひしひしと感じられる。

俺の最も苦手とするタイプの人間だ。

「こんにちは、クイントさん。突然申し訳ありません」

「そんな遠慮しないでいいのよ。私達と貴女の仲なんだから。さあ、上がって」

促されて玄関の中へと入る。

おお、上り框もついて土間と床が別れている。外装とは違って、実は日本家屋なのか。

シグナムと揃って変なところに感動していると、スリッパが差し出された。

「どうぞ」

姉妹の姉のほうが、二人分用意してくれている。母親と妹とスクーデリアは先に行ったようだ。

「ああ、ありがとう。あー……」

咄嗟に礼を言おうとしたが、まだはっきりと自己紹介をしたわけではないことに気付いた。

「ギンガ・ナカジマです。ギンガと呼んでください」

「ありがとう、ギンガ。俺は皇黒煉。よろしく」

「えーと……」

「ああ、ごめん。こっち風に言うと、クレン・スメラギだな」

ミッドだと名・姓になるか。慣れてないと何を言っているのか分からないよな。

「私はシグナム・ヤガミだ。よろしく、ギンガ」

「よろしくお願いします、クレンさん、シグナムさん。どうぞこちらへ」

ギンガに案内されて、居間に通される。

先程の三人に加えて、髪に白いものの混じった男性が一人。

「おー、全員揃ったようだな。まあ、座ってくれ」

「失礼します」

用意された席にシグナムと共に腰を下ろす。

「先に自己紹介だけしておこうか。俺はゲンヤ・ナカジマ。魔導師ランクは無いが、地上本部で一つ隊を預かってる。

 それでこっちは妻のクイントだ。俺とは違ってバリバリの武闘派魔導師で、首都防衛隊の副官だ。

 そして、娘のギンガとスバルだ」

ゲンヤさんの言葉にあわせて、スクーデリアが率先して紹介しようとするのを制して、自ら声を上げる。

「申し遅れました。私は皇黒煉です。今日はお忙しいところをお時間いただいてありがとうございます」

「八神シグナムです。よろしくお願いします」

「よろしく」

「よろしくお願いします」

「……」

俺達の挨拶に上の二人は丁寧に返してくれるが、スバルはクイントさんの陰に隠れて様子を伺っている。

「こらっ、スバル」

その態度にクイントさんが窘める。

「黒煉君の顔が怖いからって、初対面の人にそんな態度じゃ失礼でしょ。それに顔が怖いのはお父さんも一緒なのに」

「おいっ」

今貴女も十分失礼なことを言いました。ゲンヤさんも思わぬ方向からの奇襲に驚いている。

「いや、いいんですよ」

座ったばかりの椅子から立ち上がり、スバルの傍まで寄って膝を折る。

子供の相手をするときは、まず目線を同じ高さに持ってこないと。

「お名前は?」

「……うー」

「ほら、スバル。頑張って」

それでも話し出すのに躊躇する妹を、ギンガが応援する。

「……スバル・ナカジマ……」

「そっか、よろしくスバル。そうだな、スバルの好きな食べ物ってなんだ?」

「……アイス……」

ほらきた。よしよし、調査は正しかった。

「奇遇だな、俺もアイス好きなんだ。ちょうど今日お土産にアイスを作ってきたんだ。

 良かったら食べないか?」

俺の言葉を聞いて、途端に目を輝かせる。

「ほんと!?」

「ほら」

持ってきた箱をスバルの目の前で開き、中を覗かせる。

「わぁ!! すごい!! これおにいちゃんが作ったの!?」

「ああ。そこにいるシグナムの妹もアイスが大好きでね。その子も味の保証をしてくれてるから、期待してくれていいよ」

「そうなの?」

「ふふ、そうだな。あいつも気が付けばすぐにアイスを食べようとするぐらいだ。中でも黒煉のアイスは絶賛していたよ」

「あのっ、私も頂いていいですかっ」

先程までの様子が嘘のように明るくなった。

ギンガも一緒に名って箱の中を覗き込む。

そのことにほっとしながらも、ようやく気が付いた。

「大丈夫でしたか、お菓子とか」

教育方針とかで、あんまりお菓子あげてなかったりするとまずいと今更ながら思い、横のクイントさんを見上げる。

「今日は特別よ、スバル」

問いかけられた彼女はさして気にした風も無く、微笑みながらキッチンに案内してくれた。

「すいません、突然で……」

「いいのよ。それにしても、アイスでスバルを釣るなんて、なかなかやるわね。

 安直だけど、あの子に対しては効果は絶大よ」

そんなことを話しながら、盛り付けをしているとスクーデリアがやってきた。

「黒煉君、二人の相手は私がするよ。その間に二人と話をしてくるといい」

「すまんな、助かる」

「なに、いいってことさ。さーて、ギンガちゃん、スバルちゃん、ヴァネッサお姉ちゃんと一緒に食べようかー」

そう言うと、三人分をお盆に載せ、ギンガとスバルをつれて庭へと去っていった。










 ◆◇◆◇◆◇◆










「それで、ヴァネッサは紹介したい奴がいるって話だったが……」

スクーデリアが姉妹を連れて行った後の居間。

残っているのはナカジマ夫妻に、俺とシグナム。

「厳密に言うと、俺が貴方がたに会ってみたかったんです」

俺の言葉に、少し顔つきの変わる二人。

「言っちゃなんだが、うちはお前さんが興味を持つような立場じゃないと思うだがね」

「いいえ、充分興味深いですよ……。戦闘機人の姉妹を引き取ったんですから」

途端に、剣呑な空気が漂い始める。

それでも、先日のスクーデリアとレヴェントンのペアに比べれば天国と地獄ほどの差がある。

「……どういうつもりだ……」

威圧的な気配を出しながら、低い声で尋ねられる。

クイントさんのほうはデバイスにまで手をかけている。

「どういうつもりも何も、ただ会いたかったんですよ」

「……随分と酔狂な趣味だな、戦闘機人に会いたいなんて……」

「そうでもないでしょう。わりと普通だと思いますが、





 兄が妹に会いたがるなんて」





居間を覆っていた鋭い空気が霧散するが、変わりに満たすのは驚愕。

「……つまり、貴方も戦闘機人なの?」

「そういうわけではないんですけどね。正確に言えば俺は人造魔導師です。

 突き詰めれば、同じ親に行き着くので、兄と妹というのは間違っていないと思います」

「そっちのシグナムさんも?」

話を振られたシグナムが、否定を返す。

「私自身は、あくまで黒煉に協力する立場にしかありません。

 ですが、この身はプログラム体ですから、創られた存在であるというのは同じです」

「そう……」

窓から外を見遣る。

三人が同じベンチに並んで座り、俺が持ってきたアイスを仲良く食べている。

ギンガは上品に、スバルは元気いっぱいに。

スバルの頬に付いた食べかすを、ギンガがハンカチで拭いてあげている。

こうして見ていても、あの姉妹が機械の身体だなんて、戦うことを目的として創られたなんて嘘のようだ。

だが、それは逃れようのない事実。

「それで、俺達に会って聞きたいこともあったんじゃないか」

「そうですね……」

その言葉を聞きながら、こちらに気付いたスバルが手を振ってくるのに、同じように振り返す。

ゲンヤさんとクイントさんも同様に笑顔を向ける。

本当に、暖かい家族だな。

「……確かに色々とあったんですけど、もうどうでもいいかなと思えてきたので、ひとつだけいいですか」

「気になったんなら、聞いておけばいいのよ。そんなこと出来るのは子供の特権なんだから。

 それに応えるのは、大人の義務よ」

そんなクイントさんの言葉に背中を押され、口を開く。

「では一つだけ。スバルとギンガは貴方がたにとってなんですか」

「娘だよ」

「大事な、大事な……」

返事を一瞬の間も置かずに放たれた。

「確かにあいつらは戦闘機人だ。定期的な技術局でのメンテナンスも必要だ。それはどうしようもない"事実"だ」

「でもね、あの子達は紛れもなく人間なの。笑って、怒って、泣いて、みんなと一緒に成長していく。

 私達の愛すべき娘たち。それが、私達家族の"真実"よ」

そう断言した。

「ありがとうございます」

やっぱり、暖かい家族だ。

「貴方がたのような人がいてくれる。そのことが俺は嬉しい」

本当に、良かった。

「創られた存在でも、愛を与えられることを証明してくれる」

本当に、ありがとう。

「それが、本当に嬉しく思います」

そう伝えると、頭に重みを感じた。

「何かあったらいつでも来な」

「あの娘達のお兄ちゃんなら、私達の子供も同じなんだから」

ゲンヤさんに頭を撫でられながら、初めての感覚に少し戸惑う。

今までも、高町家で士郎さんや恭也さんに撫でられることもあったが、それとも違う。

これが父親なのか。

そんなことを考えていた。

「こっちからも一つ聞いていいか」

「どうぞ」

「親ってのは誰だ」

やっぱり気になるんだろうな。これは予想していたことだ。

ここに来る前は、引きずり込んでしまえばいいと思っていた。

だが、この家族を見て気が変わった。本当に巻き込んでいいのか迷ってきた。

人を騙してまで目的を達成しようとしていたのに、この人たちには躊躇いを覚えるなんて自分勝手だなとも思う。

「ヴァネッサが最近なにやら動いているのは知ってる。大方お前さんが関係していることだろう」

「ここで貴方が喋らなくても、私達は勝手に首を突っ込む。だから、遠慮なんてしないでいいの」

本当に、やりにくい人たちだ。

「いいんじゃないか。言ってしまっても」

シグナムまでそんなことを言い出した。

「好意には甘えておけばいいんだ。何でも一人で背負い込もうとするな。

 クイント殿もおっしゃっていたが、もっと子供の特権を有効に使え」

「そうそう。我侭言ってもらえないのも、親としては悲しいのよ」

そして、俺の背中を押すのはいつもシグナムなんだな。

「じゃあ、話しますよ。俺の過去。そして、俺達のやろうとしていること」










 ◆◇◆◇◆◇◆










「スバルー、ギンガー。ちょっとこっちにいらっしゃい」

話しを終え、ナカジマ夫妻も協力を申し出てくれた後、クイントさんがもう一度自己紹介をしろと言ってきた。

窓際まで走ってきた二人を前にしても、正直何を言えばいいのか分からん。

「ほらほら、ちゃんとして、お兄ちゃん」

耳元で小声で呟かれる。

あー、そういうこと……なのか。

「えーとな、スバル、ギンガ。今日から俺はお前達のお兄ちゃんになった。これからよろしく」

そう伝えても二人はぽかーんとしている。

まあ、いきなり言われてもわからんだろ。

「お兄……」

「……ちゃん」

「そうよー、お兄ちゃんよー」

しばらくして、二人はようやく言葉の意味を理解した

次の瞬間、青い少女たちは弾丸となった。

「「お兄ちゃんっ!!」」

「ぐほぉっ」

痛ぇっ。

突然すぎる上に悪意もないもんだから、全く反応できなかった。

思いっきり抱き付かれて背中から床に倒れる。受身も取れなかった。

「おやおや、早速仲良しだね。うんうん、良いことだ」

のんびりやって来たスクーデリアがそんなことをほざく。

「黒煉君は格闘技も出来るからね。シューティングアーツの相手もしてくれるよ」

「貴様! 要らんことを言うな!!」

「お兄ちゃん! 私と組み手してください!!」

ほら、言わんこっちゃない。喰いついてきたよ。

実践なら問答無用だが、基本女子供を殴るのは性に合わん。

しかし、この期待の目を見ると無碍に断ることも出来ない。

「むー、お兄ちゃん。私とも遊んでよ」

「待てっ! スバルっ! 長いからって髪を引っ張るなっ!!」

反対側からスバルも攻勢に出る。

あーもういいか。今日は特にもうやることもないし。

「よし、みんな庭に出ろ! 今日は陽が暮れても相手してやる!!」

テンションをマックスにまで上げ、二人を小脇に抱えて飛び出す。

「なにやってんだ、シグナム! スクーデリア! お前らもだ!!」

「なっ!? 私もかっ!?」

「おっ、いいのかい? ほら行くよ、シグナム君。

 遊びでも私は本気を出すからね。大人気ないことしちゃうよー」

「ちょっ!? 准将!?」

ノリノリでシグナムを引っ張ってくるスクーデリア。










宣言通り、この日は陽が暮れても七人で遊び倒した。

こんなに心から楽しんで遊んだのは三年ぶりだった。

ここに来るという選択は、間違ってはいなかった。

この先起こることもどうとでもなる気がしてきた。

そんな確信があった。










 ◆◇◆◇◆◇◆










「彼がタイプゼロの二人に接触したようです」

そうか。

今回は事前に動きが掴めなかったね。

協力者も付いたようだし、アースシェイカーとクロスカノンが相手だと、これからは私も慎重にならないといけないかな。

「映像出ます」

秘書の言葉と共に、正面の大型モニターに彼の姿が映る。

「……どうしてこんなに泥まみれなんだい……」

そう、件の少年は体中真っ黒にして走り回っていた。

自慢であろう長い黒髪もグシャグシャだ。

「前後の映像から察するに、タイプゼロの二人が水を撒いてぬかるみを作り、

 烈火の将とアースシェイカーがそこに追い込んだようです」

彼女が映像を巻き戻すと、確かにそういうシーンがあった。

少年は気付いていないが、一部だけ黒ずんだ地面がある。

烈火の将が少年を捕まえようと走り、ぬかるみに近づいたところでアースシェイカーが大人気なく魔力弾を叩き込んだ。

吹き飛ばされた先に例の場所。勢いがあったためただ落ちるだけでは済まず、その上を転がり回る。

映像を進めると、少年が報復措置で残りの四人も泥まみれにしていた。

全員が全員、見るも無残な姿になっているというのに、



その顔には終始、笑みが浮かんでいた。



泥だらけの真っ黒な顔で、弾けるように笑っていた。

「楽しそうだね」

「そうですね。私には理解できませんが」

そうだろう。そういったことは教えてこなかったから。

でも、こういったことも大事だよね。

僕も、こういったことは経験している。

もう、何年も昔のことだけど。

もう、愛しいあの女性もいないけど。

「予定を繰り上げようか」

「どの予定ですか」

「彼に会いに行く予定だよ」

待っていてくれ。

僕達も一緒に遊ぼうじゃないか。
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