現在リリカルなのはの二次創作と日記を掲載。そのうちオリジナルの恋愛物も書くかも……
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
空の少年 07 The First
空も見えない無機質な空間で、淑女と少年の対決は行われていた。

戦闘が開始されてからかなりの時間が経過しているが、女性から放たれる凶悪な弾幕のために、彼我の距離はこれまで縮まったことは無い。

時折少年の方からいくつかの弾丸が放たれるが、それも相手に届くことはなかった。




翡翠に蹂躙される漆黒



それが、この広大な室内を表現するのにもっとも相応しい言葉だろう。

一つ一つのサイズは小さいのが救いだが、これだけの量の魔力弾。

点を通り越して面で襲い来るまさしく弾幕は、翡翠の壁となって立ちはだかる。

明らかに自分に当たるものだけを事前に落とせるだけ打ち落とし、残ったものは範囲を狭めることで密度を高めたシールドで逸らす。

いつまでも変わることのない戦況に対して、黒煉の顔に焦りの色が深くなる。

「なんという馬鹿魔力。これがSSか。殺し合いでもシグナムの時の方がずっと楽だ」

ロングレンジでの戦闘に持ち込まれている。打つ手がほぼ無い状況のため遠距離で戦闘を余儀なくされ、ジリ貧に陥っている。

何とか隙間を縫って近づき流れを変えたいところだが、これだけ出来るのなら相手もクロスの経験が全く無いということも考えにくい。

「何をしている。こんな所で躓いている暇は無いだろうっ」

それでも、歯を軋ませるほどの怒りを表しながら、そう小さく呟いた。

これまでのシールドを両手に展開し弾幕をいなし、共に飛行魔法を発動させ被弾しながらもリンディに迫る。

僅かずつではあるがその距離を詰め続け、後数瞬といったところで、

「スティンガーレイ」

威力は弱いながらも、数多の弾丸にまぎれて鋭い貫通力を持った光にシールドを粉砕され、地に落ちた。















魔法少女リリカルなのは 空の少年 07 The First















「いかん、弱すぎだろ……」

訓練終了後の休憩室。

シャワーを浴びて間もなくまだ髪が乾いていないため、纏めずそのまま背中に流している。

しかし、慣れていないとはいえ魔法戦はやりにくいな。

普段の戦い方をすれば勝てなくても負けはしない気がしたが、それでは意味が無い。

どう考えても出力が足りてないし、演算速度もお粗末。

そんなことを考えていると、空気が抜けるような音と共に部屋の扉が開いた。

「お疲れ様、黒煉君」

「お疲れ様、黒煉」

側頭部で二本纏めたツインテール。

それが栗色と金の二つ。

なのはとフェイトだ。

「いや、そもそも疲れるほどのものができてない。ぐだぐだだったろ、あれは」

「そんなことないよ。初めて魔法を使ってあれだけできれば、凄いよ」

「そうだよ、黒煉。しかもデバイスの補助も無しなんだから、すごい才能だよ。

 リンディさ……母さんも褒めてたからね」

慣れない呼び方に顔を赤くするフェイトを見ながら、その言葉に感謝するも内心では結構な鬱状態だ。

「結果が出なければ意味は無いんだよ。少なくとも俺にとってはな。

 とりあえず、デバイスの作成が急務だってことがわかったからそれが収穫と言えば収穫か。

 ああ、それで思い出した。二人のデバイスも参考にしたいから、見せてもらっていいか」

俺の要望を快諾してくれた二人を連れて、再び訓練場へと足を運ぶ。

今度はシグナムも呼んである。というよりも、前日の内に呼んであった。

俺とリンディさんの魔法講座の最中に時間を合わせようとしたんだが、俺が余りにもさっさと落とされたためタイミングがずれた。

戦闘スタイルを見た場合、俺と最も近いのはかの烈火の将だ。

日常的に彼女から剣を習っているし、それ故に彼女も俺の動きや癖を理解してくれている。

アドバイザーにはうってつけだ。

デバイス作成のために彼女の意見を聞こうと思い、俺の魔法戦についても一度見てもらおうと思ったんだが、このざまだ。

広い室内に足を踏み入れると、シグナムとリンディさんがモニターに何かを映し出して話し合っている。

「ああ、遅かったな。いや、むしろ早かったと言った方が良いのか」

すぐにこちらに気付いたシグナムから、何か含みのある笑みを向けられた。

「うるさいよ。魔法戦なんて初めてなんだから、そういうこともあるんだよ」

「くくっ、そうふてくされるな。思いの外年相応に見えて、私も提督も嬉しいんだ。お前は何でもそつなくこなすからな」

「すぐに目に物見せてくれる。覚悟しておけ」

何故かは知らないがやたらと楽しそうだ。その反応につい悔しく思い、素っ気無い態度を返してしまう。

「はいはい、じゃあ今日の反省会をしましょうか」

軽く手を叩いて、こちらの口喧嘩とも言えない言葉の応酬に割り込まれる。

それに併せて俺もリンディさんに向き直り、居住まいを正す。

「先に黒煉さんから何かあるかしら」

普段と変わらない笑顔だが、硬い空気。いつも魔法の講義を受けるとき、こんな雰囲気になる。

公私を分けているのだろうか。そんな職業人としての態度も不謹慎ながら好感が持てた。

「魔力の変換が致命的に遅いです。その所為で一つの魔法を使うのに多くの時間がとられます。

 加えて、魔力の瞬間最大出力が、保有魔力量に比べて圧倒的に少ない。とりあえず、感じたのはこれぐらいです」

「そうね、問題点については概ね合っているわ。でも悪い方ばかりに目が行き過ぎね。

 確かに魔力の変換に手間取ってはいるけれど、反面その際の制御に関してはとても優秀。

 初めて魔法を使う場合、そもそもほとんどの人がここの変換ができない。一流の魔導師と呼ばれる人でも、たとえ僅かだとしてもここで変換ロスが起きるわ。

 それでも黒煉さんは初めて臨んだ魔法で変換をやってのけた。しかも、ロスを全く発生させること無く、用いた魔力を全て術式に送り込んだわ。

 時間がかかって見えるのは、一部の無駄も無く変換ができている所為で、これは慣れれば限界まで早くできるから寧ろ強みになるわね」

「そうなのか?」

「うん。私も魔力を無駄使いしてるってよく言われるよ。威力が高いのは総魔力量で誤魔化してるだけだって」

「私はあんまり言われたことはないね。でも、多少は消えていっちゃう分があるのは否定できないかな」

問題だと思っていたところは、実は良いことだったらしい。

というか、用意したものを無駄なく使うのは当たり前のことじゃないのか。

しかし、これが普通でないと言うのなら確かに有利になるだろう。

魔力使用でロスが無いと言うことは、通常の魔導師と比較した場合、元々が同じでも実質ロスが無い分の魔力量は多いと言うことになる。

「術式に関しても精密だったわ。高ランク魔導師になればなるほど、術式の精度というのは荒くなるの。

 さっきの変換効率でも同じだけど、魔法は一見繊細そうなものに見えるけれど、その実大雑把なところがあるのよね。

 黒煉さん自身も感じていたようだけれど、確かにあなたは魔力の出力が弱い。にもかかわらず、手加減したとはいえ私の魔力弾を防いでみせた。

 これは術式の精度が高いおかげね。簡単に言うと魔法の威力は魔力量とこの術式精度の和で表れるのは知ってるわよね。

 高ランク魔導師は術式の甘さを魔力量で補う。穴のある術式でも、魔力量にものを言わせて魔法を行使できるから、細かいところを無視しがちなの。

 それとは逆に、黒煉さんは魔力の不足を術式で補っている。これも、将来的に考えればとても良いことだわ。

 咄嗟にシールドのプログラムを変更して、密度を上げて強化したことも、応用力が高い証拠ね。」

そこまで告げて、リンディさんは一拍置く。

そして俺の瞳を見つめて、ゆっくりと続きを口にした。

「以前から思っていたことだけれど、貴方は間違いなく天才と呼んで差し支えないものを持っている。

 今でこそ魔法戦では拙いものが目に付くかもしれない。それでもその問題点は全て、魔力を使うことに体が慣れていないだけ。

 結論を言えば、理論面で大きく口に出してけちを付けるところが既に無いのよ。

 後はひたすら模擬戦を繰り返して魔力運用を身体に叩き込むしかすることがないの」

そう申し訳なさそうに、リンディさんは締め括った。










 ◆◇◆◇◆◇◆










本来の仕事に戻ったリンディさんとは別に、俺とシグナム、なのはにフェイトは訓練場に残った。

「黒煉君はアームドデバイスで決まりなんだよね」

「まあ、そうなるだろうな。デバイスに関しては決まりみたいなもんだ」

「そうだよね。黒煉君運動神経いいもんね」

「関係あるのか」

よく分からない言動とともに軽く落ち込んだ様子のなのは。

どういうことかと横のフェイトに目をやる。

「えっと、魔法行使のサポートをしてくれるのは変わらないけど、アームドデバイスだとやっぱり武器としての性能を重視してるんだ」

「インテリジェントデバイスでもそういった形態は取れるが、近接戦になるとどうしても魔法よりも身体能力がものを言う世界になる。

 こう言ってはなんだが、高町は魔法の面では優秀だが、体の使い方が分かっていない。近づかれたらどうしようもない、典型的な砲撃魔導師にあたる」

シグナムが続けて説明をしてくれる。

確かになのはは運動音痴だからな。高町家の一員の癖に何でこうなってしまったんだろうか。

「フェイトちゃんと違って、デバイス作りじゃあんまりお手伝いできることないかも……」

そんなこと気にしてたのか。

まあ、俺が管理局に入るって言ったときには、滅茶苦茶喜んでたからな。

同じ道を進めることを嬉しく思いながらも、力になれないことが悔しいのか。

全く、面倒な思考回路をしているな。

そう考えながらも、なのはの態度を見て俺自身もどこか暖かい気持ちになった。

「それでも遠距離用の魔法も組むからミッド式も混じるさ。システム面ではレイジングハートも参考にさせてもらうさ」

それを聞いたなのはは、勢いよく顔を上げて頬を綻ばせる。

「うん。任せておいてよ。砲撃だったら私が一番だから。何でも聞いてね」

「ああ、頼もしいな」

俺もなのはに笑みを返しながら、描いていた構想を頭の中の引き出しから取り出す。

「やはり刀剣型でいくのか」

「ああ。でも、刀剣型って言っても種類はあるだろ。ちょうど、実体剣型と魔力刃型が揃ってるんだから意見を聞きたい」

そう言って、シグナムとフェイトに向き直る。

「ふむ、どちらも一長一短の特性はある。実体剣型は、魔力刃型に比べて威力を与えやすい。元々の刃があるからそれだけ直接的に効果がある。

 が、その分重量があって取り回しが悪く、そうそう無いことだが刀身を破壊されれば、魔法補助はしてくれるがほぼただの鈍器になるな」

「魔力刃タイプだと性能がデバイスの刀身出力システムと込める魔力量に依るね。低ランク魔導師が使っても脅威にはなりにくいかな。

 でも、実際の刀身が無いから軽くて扱いやすいよ。刀身自体もデバイスが問題なければ、魔力が続く限りいくらでも作り直せるしね」

二人の説明に少し首を捻るところがあった。

確かにそれは元々想像していたことだが、

「そもそも、重量を考えない刀剣っておかしいんじゃないか」

俺の言葉を聞いても、フェイトはよく分からないようだ。

すぐに俺の言いたいことを理解したシグナムが、フェイトを呼ぶ。

「多分これは見たほうが早い。テスタロッサ、少し模擬戦をしよう。あくまで二つの刀剣の質を比べるものだから、近接戦の軽いものだ」

「うん、わかった」

そう告げて離れていく二人を見送る。

「言いたいこと、分かったか」

「にゃ、ぜんぜん」

うん、なのはに聞くのは間違いだな。

まもなく、甲冑とジャケットを纏った二人の剣戟が始まる。

違和感はすぐに気付いた。

それこそ、フェイトが最初の一歩を踏み出した瞬間にだ。

ああ、そういうことか。

二人は五分ほど打ち合ってすぐに戻ってきた。

「どうだ」

「魔力刃の扱い、あれは剣術の動きじゃない。全くの別物だな。

 フェイトの場合は持ち前の運動神経で様になってはいるが、そもそも体重を乗せるようなものではないのだな」

俺の言葉にシグナムが頷く。

「ああ、ミッド式は本当に魔力を第一に考えているからな。剣術の型は全く意識していない」

「結局のところ、実体剣の一択だな。俺の悩みは無駄なものだったか」

「そうでもないだろう。ミッド式の近接魔導師の弱点がわかったんだ。それだけでも収穫だ」

「まあ、そうだな。じゃあ、後はシステム面か。差し支えなければ、三人のデバイスを一度使わせてもらいたいんだが……」

俺の申し出を快く受け入れてくれた三人のデバイスを使ってみる。

やっぱり一番使いやすいのはレヴァンティンだな。シグナムの戦闘スタイルが俺と近い所為だろう。

OS面ではフェイトのバルディッシュ。近・中・遠距離全部に対応できるだけあってかなり丁寧にシステムが構成されている。

魔法プログラムではレイジングハート。射撃・砲撃特化だがその方面に関しては無駄なく美しいとまで言えるほどの術式が組まれている。

『何か不思議な感じです……』

『ああ。専用の調整をしたわけでもないのに、驚くほどリンクがスムーズだ』

『確かにレイジングハートとバルディッシュの言う通りだな。黒煉に使われたとき、やけに魔法を発動させやすかった』

使用した時のデータと所感の整理をしていると、デバイス三名が突然話し始めた。

あまり無いことなので、本来の所有者である三人も驚いている。

「そうなの? レイジングハート」

『はい。理由は分からないのですが……』

「バルディッシュは?」

『私の方もです。黒煉の方で心当たりは無いのか』

「残念ながら、さっぱり」

そう口にしながらも、ある程度は予想が付いている。

十中八九、俺の生まれに起因しているのだろう。やたらと動物に好かれるのもその辺が関係しているのかもしれないな。

シグナムと一緒に俺の出自を知っているレヴァンティンは、今回は黙ったままだ。空気の読める男だな。

「その辺は、追々調べてみようか。レイハもバルディもありがとう。参考になったよ」

話がおかしな方向に行く前に切り上げる。

その後は三人の模擬戦を観察し、データの収集。

自身のデバイス開発に必要な分は大体集まってきたか。










 ◆◇◆◇◆◇◆










三人と別れて部屋に戻り、設計に入る。

魔法補助を期待するならば、どうしても人工知能は必要になるか。

しかし、AIはそのプログラムだけでかなりの容量を使うからな。他の部分を削るしかなくなる。

基本使用する魔法の術式だけインストールしておいて、その分を回すのが一番いいか。

いや、術式を圧縮保存して状況に併せてあらかじめ必要な分だけ取捨選択で圧縮・解凍しようか。

近接戦は多分そこまで強力な魔法が無くても喰い付いて行ける。

基本は身体強化と高速魔法で充分。しかも身体強化は複雑な術式ではないから、HDは使用せず俺が個人で起動した後メモリ上で処理をさせるか。

一番必要なのは中・遠距離だな。現状このレンジで俺の攻撃手段がほぼ無いから容量を割くならばここだ。

とりあえず、直射と誘導制御、それに砲撃も一つずつは欲しいな。

それに加えて防御魔法。入れておかなければいかないものはこれぐらいか。

あとは魔法の発動部分だな。通常の魔導師はそれぞれ別のアプリケーションを使って起動する。

そこでOSをこだわって組んで、発動のプロセスをルーチン化して関連付けできればかなりの簡略化と高速化ができるはずだ。

これだけやるといささか削りすぎかとも思うが、AIの成長を加味して空き容量を見積もっておかないと将来的にえらいことになる。

現状空いている部分は演算支援にでもまわしてやれば、拙い発動もましになるだろう。

ソフトウェア部分は大体の枠組みは決まったな。次はハードか。

しかしなー、今日のフェイトやなのはを見ている限り、ミッドの人間はアームドデバイスでもこの辺りを重要視していないようだからな。

多分、こういった感じでお願いしますって言っても、期待したものは出てこないと考えたほうが良いだろう。

かなり細かい設計図を作って、それこそ俺が足繁く通って一緒に試行錯誤するのが一番か。

形状は打刀でほぼ決まり。後はそれにカートリッジシステムやらデバイスコアやらを肉付けしていくか。

それをどこに付けるかなんだよな。コアは鍔か柄尻のいずれかだろう。

刀身は極力そのままの形を維持しておきたい。となると、カートリッジシステムを積むのは柄になる。

だがそれだと重心の位置がおかしくなるだろう。自分の手元に重心がある剣など、ゴミもいいところだ。魔力刃型と変わらない。

妥協して刀身の形状を極々一部だけ変えるか。許容範囲は鍔元ぎりぎりの峰部分ぐらいか。

参考にしようとレヴァンティンのデータを眺めていると、HD上に不可解なデータを見つけた。

なんだこれ。プログラムが途中で切れてる。これ単体じゃ起動するどころか、意味すらも無い。

内容を見る限り、AIプログラムの一部か。大体、正規のものに比べて三分の一といったところか。

ふと気になって、シグナムから一緒にもらってきたグラーフアイゼンとクラールヴィントのデータも調べてみる。

予想通り、こちらにもプログラムの一部が保存されていた。三つを合わせてちょうど一つのものが完成するようだ。

しかし、魔法って言っても本当に地球で言う物理だよな。リンディさんの講義もアコンプリスの講義も、その殆どが数式だった。

それに合わせてプログラミングの技術を使いこなせなければ、デバイスどころか魔法の術式を組むことすらできない。

『黒煉様、スクーデリア准将より通信が入っています』

正確に解読をしようとしたところで、アコンプリスに通信が入る。

とりあえず、こちらは中断するか。どうしても必要な作業ということもない。

「わかった。繋いでくれ」

俺の言葉にすぐ新しくモニターが開かれる。

『やあ、元気だったかい、黒煉君』

鮮やかな蒼の髪と整った顔が画面に映し出された。

「元気も何も、あれからまだ二日だろう。特に何も無いさ」

『いやぁ、そうでもなさそうじゃないか。さっき先輩に君のこと打診に行ったんだけどね。

 寧ろもう教えることが無いから、あっちから頼もうと思ってたって言われたんだよ。

 さすが、と言うべきなのかな』

「まあ、そうなんだろうな。そう創られたんだから……」

自虐的とも取れる俺の台詞に、少し彼女の顔が曇る。

『すまない。そんなつもりで言った訳じゃないんだ』

「気にするな。ペシミストを気取るつもりも無い。それで今日はどうしたんだ。あまり接触するのも不味いんだろう」

『確かに褒められたことじゃないんだけどね、この間頼まれていたことだよ。セッティングが終わったから一先ず一報を入れておこうと思ってね』

頼んでおいたことって言えば、例の戦闘機人の娘のことか。

「いつになった」

『私も同席したいし、陸は忙しいからね。急だが明日の午後だ。都合が悪いならまたやり直すけど』

確かに急だな。まだ春休みだし、さっきの話だと俺の教育もリンディさんの手からスクーデリアに移ったのだろう。行けるな。

デバイスに関してはなるべく早いほうが良い。今夜中に仕上げて、朝一番にマリエルさんに渡してそれから行くのが良いか。

「わかった。そのままで話を進めてくれ」

『了解。じゃあ、明日の午後二時に本局のエントランスで待っていてくれ。それと、シグナム君も連れておいで』

「? 別に俺一人で良いだろう?」

『何言ってるんだい、君の嫁だろう。はばにしたら可哀想じゃないか』

「…………何を言ってるんだお前は…………」

何を突然言い出すかと思えば、訳の分からんことを。

『あれ、違ったのかい。まあ、どっちでもいいや』

自分で話を振っておきながら、この態度。

「お前はいつも楽しそうだな」

『んー、そうでもないさ。こんな態度とるのは決まった相手だけだよ。普段はもっと格好つけてる』

俺の前でも格好つけていて欲しかった。まあ、気を許してくれていると思っていいんだろう。

『実際のところはあれだよ。君に近い人間で、この辺のこと知らせているのは彼女だけだろう。行動するなら極力セットのほうが面倒が無いんだ』

「そうか、一応声は掛けておく。急だから、あいつも来れる保証は無いぞ」

『それでいいよ。さて、私からはこれだけだね。君の方からは何かあるかい』

「デバイスの概略が決まった。一度見て欲しいんだが……」

そう言って、今後の予定を伝える。

『いいよ。設計図が上がったら、私とアイズのところに送って。予算も私が用意しよう。

 明日の朝はアイズが暇だって言ってたから、マリエル君に渡す前に一度会って詰めておくといい。

 彼はデバイスマイスターとしても優秀だからね。私のスターゲイザーも彼の作品なんだ』

「わかった。他は特に無いな」

『そう。じゃあ、また明日会おう』

眩しいほどの笑顔を残してモニターが消える。

さて、予定外に忙しい夜になることが決まった。徹夜コースだな。

とりあえずシグナムに連絡して明日の予定を聞いて、レヴェントンの方にもアポを取って置かないとな。

もう六時か。それが終わったら、ハラオウン家に行くか。

多分、スクーデリアの話も夕食の時に聞けるだろう。










 ◆◇◆◇◆◇◆










「これは君が自分で組んだのですか」

「ああ、他のデバイスも参考にさせてもらったが、どこか問題あったか」

翌朝。

事前に伝えておいたように、レヴェントンの執務室を訪れた。

一睡もせずに書いたから、多少雑なところはあるかもしれない。

楽しいというのもあったが、途中から眠いを通り越して、変にテンションが上がってきた。

「ところどころに細かいミスは見受けられます。

 しかし、そんなものが霞むほど面白い発想です。特にこのOSは……」

「とにかく容量を少なく、処理を早くを目指して考えてみたんだが……」

「それに比べて、こちらのデバイスの本体ときたら、屑にも程があります」

「……」

グゥの音もでない。

確かにシステム面はかなりの勉強をした。元々こちらの世界に馴染むように創られているだけあって、そちらは簡単に理解できた。

だが、俺には次元世界の資源についての知識がほとんど無い。全部、地球の材料を下にして考えていたのだ。

ミッドチルダの科学技術は、地球の数百年先を行く。あっちから見れば、それこそ化石で組んでいるように見えるかもしれない。

それに気付いたのは設計図完成間際だった。

「まあ、これを見れば君が何をしたいのかは分かります。私が書き直しましょう。

 予算は気にしなくていいんですよね」

「スクーデリアが何とかするとか言っていたが……」

「そうですか、多分ポケットマネーでしょう。じゃあ、私もちょっと出しましょうか。

 その分、良い作品を作ってあげます」

「助かる。本当に、助かる」

マリエルさんのところに行く前に、ここに来て良かった。

「ただ、アームドデバイスですから、汎用性を無視して完全に個人仕様になります。

 完成するまで、できるだけ技術局に顔を出すようにしてください」

「わかってる。その辺りは想定していたから、元々通おうと思っていた」

そんな会話をしながら、レヴェントンの手は止まらない。

凄まじい速度で設計図を書き直している。

ものの三十分もしないうちに完成させていた。

「……化け物か」

「ひどいですね、せっかく手伝ってあげてるのに」

いや、化け物だろこの速度は

「そんなことありませんよ。流石に私も普通にやればこんな早さではできません。

 むしろ、これは君が凄いんです。設計図を見ただけで君のやりたいこと、君の成そうとすること、君の理想が見えてきます。

 向かうところが分かっているのですから、後はそこへと至る道を創るだけです。こんな簡単なこともそうそう無い」

それでも三十分で完成はしないだろう、常識的に考えて。

「それじゃあ、技術局のほうへ行きましょうか」

「一緒に行くのか」

「ええ。これを貴方が単独で作ったとするのは、それなりに不味い事態になりそうですから。

 すぐに目を付けられますよ。ですので、私もかなり協力したということにします」

「手を煩わせるな」

「構いませんよ。私達も貴方を利用しようとしているんですから。

 それと、貴方はもう少し自分が特殊だということを自覚したほうが良いですね」

「肝に銘じておこう」

そうして連れ立って技術局へと向かっていった。





途中、俺の設計図を見たスクーデリアが盛大な笑い声と共に通信を開いてきたのは無かったことにしたい。















To The Second
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。